2018/06

今週の『琅琊榜<弐>』、死亡率高し…。(27話+28話)

おうちのテレビに衛星劇場を入れている皆さま、大陸ドラマ『琅琊榜(ろうやぼう)<弐> 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』、今週、6月25日(月曜)放送の27話、28話はもう御覧になりましたか。
私と同じように、恐らく多くの視聴者は、すでに前から、イヤな予感に苛まれていましたよね…?
その予感的中です…。

逝去

ギャーッ…!嘘と言ってぇぇーーっ…!!

あっ、でも、“予感的中”とはちょっと違うかも。
だって、私の予想では、取り敢えず一名のみ死亡。
一方、実際のドラマでは、27話で長林王府の世子・蕭平章、28話で梁帝と、2話立て続けに主要登場人物2名もがあの世行き。
“一話一逝去”ですヨ。
人口比で(主要登場人物の人数に対し)、この死亡率は、エゲツない高さ。
そんなに一気に死なれては、視聴者が立ち直れませんわ…。


このドラマで蕭平章を見て、「あら、黃曉明(ホァン・シャオミン)、カッコイイじゃない」と、久し振りに黃曉明に惚れ直した私のような視聴者は多いと思う。
なので、蕭平章がゆくゆく死ぬであろうことは薄々察知していても、制作者側のファンサービスで、もう少し引っ張り、生き長らえさせると踏んでいた。
いや、そうしたら、玄螭の胆を丸呑みしてから心肺停止までが、予想を遥かに上回る速さ。
黃曉明延命で、セコイ視聴率稼ぎをする気なんて、サラサラ無いわけね。潔し。(もっとも、大陸ドラマは、全部作り終えてからの放送なので、視聴者の反応を見て変えるなどという事は、そもそもしないわけだが。そのお陰で、視聴者に媚びない潔い編集ができて、独自性も出せ、結果的に良い事に思える。)

兄弟シーン

弟が愛おしくて仕方が無い知的で包容力のある兄と、そんなお兄ちゃんが大好きでたまらない可愛い弟という、長林王府のこの蕭平章&蕭平旌コンビ、私、好きだったのよねぇ~。
こんな形の永久解散で、このコンビがもう見られないのは淋しい…。



ひと世代上のコンビ、梁帝&蕭庭生もまた…

兄弟シーン

最後の最後まで良き兄弟であった。
(↑この“高齢ブロマンス”的に身をゆだねるシーンもなかなか良し。)

自分の死期を察した梁帝は、死後も兄を守るため、病床に(↓)こんな人を呼ぶ。

李斌先生

白髪の翁、寧王。 …って誰?という皆さま、

李斌先生

前作にチラッとだけ登場する、先々帝・蕭選の第3皇子で、靖王の異母兄にあたる寧王・蕭景亭。後宮の嬪妃の中では珍しくおとなしく、靜妃だけには気を許して親しくしていた惠妃が産んだ子。母に似て控えめなため、今一つ風采が上がらなかった、あの寧王である。
その性格のお陰で“出る杭”にならなかったのが良かったのか、まだ存命だったのですねー!

時が流れ、仙人のような翁になった寧王だが、お肌は明らかにピッチピチ。
新旧の画像を比べても判るように、同一人物、李斌(リー・ビン)が演じている。
専業俳優ではない裏方さんが所々で顔を出す『琅琊榜』シリーズだけれど、この李斌もまたそんな一人。

李斌先生

以前にも当ブログに記したように、『琅琊榜』で所作の指導にあたった先生です。
『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』の所作指導、及び、溫太醫役で出演し、有名になった張曉龍(チャン・シャオロン)のお弟子さんである。
続編の『琅琊榜<弐>』には、前作から続投で出演している俳優がボチボチいるけれど、みんな前作とは関係の無い役を演じている。同じ役で2作に出演しているのは、恐らくこの所作指導の李斌先生のみ。





話を、今週お亡くなりになった蕭平章とその弟・蕭平旌、梁帝とその兄・蕭庭生に戻します。
このふた組のコンビは、どちらも実の兄弟ではない。
平章は、長林王・蕭庭生に引き取られた養子、その蕭庭生もまた、先帝、あの“靖王殿下”蕭景琰に引き取られた養子。(庭生は、実のところ、靖王の実兄の子なので、つまりは梁帝の従兄。血縁がまったく無いわけではなく、従兄弟同士が兄弟になったわけ。…本人たちは、その事実を知らないのかも知れないが。)


そんな不幸続きの蕭さんちに、久々に明るいニュースも。

新生児シーン

甘州の軍営にいる平旌のもとに、琅琊閣で兄嫁・小雪が無事男児を出産したという知らせが届く。
(足形を見ただけで、なぜ男児だと判るんだ?という素朴な疑問。
現地では、「古代中国では、男児は足形、女児は手形だった」という意見が多くを占めているようだが、根拠となる出典などは見付からず。実際のとこ、どうなの??)
平旌、叔父さんに昇格。
血縁の無い兄と、その妻の間に生まれた息子は、当然平旌とは血の繋がりなど無く、形式上の甥っ子にすぎないのだが、先帝・靖王殿下の時代から、血縁以上の絆で結ばれてきた蕭さんちだから、平旌は当たり前のように、この甥っ子を可愛がるのでしょうね~。


このドラマでは、逆に、血を分けた子可愛さに盲目になる荀皇后や、本来は忠臣であろうはずが、実の妹・荀皇后や実家の荀氏一族を守るためなら悪事にも目を瞑る內閣首輔・荀白水、また、優秀で母にも愛されていた双子の弟を殺した濮陽纓のような人物も登場。
つまり、血の繋がりに固執する血脈派と、血の繋がり以上の情で結ばれようとする非血脈派、また、下手に血の繋がりがあるがゆえに複雑な感情を抱く歪んだ非血脈派など、“血”への思いを異にする人々それぞれの生き様も、ドラマの一つの見所という気がしてきた。

無理矢理な解釈になるが、“血縁の無い家族の絆”という点では、目下ヒット中の映画『万引き家族』とも共通。人間関係や家族の在り方が多様化してきている現代ならではのテーマかも知れません。





梁帝の崩御でひとつの時代の終焉を迎えた梁國。
兄を失ったことで、蕭平旌の少年時代もまた幕を閉じ、この先、ドラマ後半戦は、否が応でも大人の世界に足を踏み込む彼の人生第二章が描かれるものと推測。

亡き兄に代わり重責を担おうと、辺境の地・甘州での守備に就くことを自ら申し出た平旌、見た目からして変わりました。

蕭平旌髪型

少年っぽいポニーテールからアダルト仕様の髷へ。
私の好みは断然すっきり大人っぽい髷です。


でもね、平旌、一段と大人っぽく成長して良かったじゃないの、…と安心もしていられない。
「足手まといにはならないから!」とか言って、甘州に蕭元啟がくっ付いて来てしまったのだ。

蕭元啟

本ドラマの中で、現時点で、最も予測不能な男、それが萊陽侯・蕭元啟。
22話で、「母上、私は母上が考えもしなかった道を歩んでいきます」と、亡き母に誓ったあの言葉がずっと気になっている。ナンなのでしょう、“母上が考えもしなかった道”って。
現代だと、良家の息子が、せっかくいい大学に入ったのに、卒業間近になって、「母さん、俺、ミュージシャンになるヨ」などと言い出したら、クラクラしちゃうお母様がきっと居ますよね。
元啟もさぁー、どうせ意表を突くなら、宗室初の旅芸人くらいで満足していてくれたら無害で良いが、どうせ違うのでしょう…?!もっとビッグな事をしたいのでしょう??困った人よねぇ。


ちなみに、演じている吳昊宸(ウー・ハオチェン)は…

吳昊宸

あちらでは、私がこよなく愛する黃軒(ホアン・シュエン/ホアン・シュアン)に似ていると言われている。

私もずっとそう思っていたのだけれど、『琅琊榜<弐>』で見続けていたら…

吳昊宸

最近、たまに綾野剛が重なることがある。

深刻な面立ちヴァージョンでも比較。

吳昊宸

改めて並べてみると、黃軒ほど似ていないけれど、吳昊宸も綾野剛も、ジャンル分けするなら共に“ヘビ系顔の個性派”。記憶に残る良い顔立ちです。





前作同様、『琅琊榜<弐>』は内容が凝縮しているので、知らず知らずの内に集中力を高めて鑑賞し、放送時間があっと言う間に過ぎていくのだけれど、今週はいつも以上に盛り沢山で、おなかいっぱい。
おとなしかった萊陽侯・蕭元啟が、あんなに献身的だった泰叔、そして濮陽纓と、立て続けに2人殺した時もギョッとしたが(ちなみに、2度とも、背後から刺殺)、今週の蕭平章&梁帝の死去には、さらなる動揺。
ドラマ中盤にもかかわらず、重要人物を一気に2名も消したのは、後半戦、それをも上回る怒涛の展開が控えていて、視聴者を飽きさせないゾ!という自信の表れなのか。
うわぁ~、怖い。…でも、楽しみ。
衛星劇場、次回の放送は、3日後、7月1日(月曜)。

宗主への想いを断ち切った宮羽が現世で血迷ってあの趙王と!?

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大陸芸能界で、またまた新たに交際を公にしたカップルが。
そのカップルとは、周奇奇(チョウ・チーチー)江奇霖(ジャン・チーリン)
2018年6月27日の昨日、周奇奇、32回目の御生誕記念日に、微博上で恋人関係を公表。
(周奇奇のズボンのジッパー、随分存在感がありますね、…余談になりますが。)


えっ、ケド、周奇奇と江奇霖って誰ヨ?!って、そこのアナタ様…

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周奇奇は、『琅琊榜(ろうやぼう)麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』で、表の顔は、金陵にある妙音坊の売れっ子楽妓、でもその実、江左盟の密偵で、ボスである宗主・梅長蘇に密かに想いを寄せている、あの宮羽を演じた女優さん。

江奇霖は、『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』で、自分の妃を太子である弟に寝取られても、のらりくらり、…でもその実、案外聡明という南夏ロイヤルファミリーの異端児・趙王を演じた俳優さん。

宗主に一途な想いを受け入れてもらえなかった宮羽は、転生した現世では、妻に裏切られた趙王と、フラレた者同士で、古傷をなめ合い、幸せな一歩を踏み出していたのですね。
何百年もの時を経て、ようやく迎えたハッピーエンディング。
両作品を熱心に観ていた一視聴者として、ホッといたしました。
終わり良ければ全て良し。めでたし、めでたし。


昨日は、楽しくお誕生日を祝った模様。

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うわぁ~、大量の花束。
年の数、32本どころではないですね。

(↑)上のお写真でも分かるように、カメラが趣味の江奇霖は、記念日のガールフレンドもパチリ。

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江奇霖って、正統派イケメンではないけれど、雰囲気があって、私は結構好き。
比較的最近に観た中華版『深夜食堂~深夜食堂』でのボクサー役も良かった。

お二方とも、末永い幸せと、お仕事での益々の発展を、お祈りいたします。

(このニュースに思わず反応し、ブログ更新しちゃったけれど、それどころではなかった。本当にマズイ。早く出掛けなければ …汗)


◆周奇奇については、こちらの“大陸美女名鑑:『琅琊榜』の麗しき淑女たち”を参照に。

映画『夜の浜辺でひとり』

夜の浜辺でひとり

【2017年/韓国/101min.】

ドイツ・ハンブルク。
既婚男性との恋に疲れ、何もかも捨て、逃げるように見知らぬ異国へやって来た女優・ヨンヒ。
姉のように慕う友人・ジヨンのもとに身を寄せ、週末には韓国から会いに来るはずの恋人を待ちながら、この街で静かに過ごすが、彼が本当に自分を訪ね遠路遥々やって来るのか、徐々に信じられなくなっていく。

韓国・江陵(カンヌン)。
帰国したヨンヒは、この海辺の街で、久し振りにジュニ先輩と会う約束。
待ち合わせまでの余った時間を潰していたところ、偶然にも古い知り合いのチョンウと再会し、ボンボンというカフェに入り、暫しお喋り。
用があって席を外したチョンウに代わり、もう一人の知り合いミョンスが来店。
ミョンスは、この店を取り仕切っている女性・ドヒの恋人で、共同経営者の一人でもあるのだ。

懐かしい人々と再会したヨンヒは、この街に留まるため、紹介されたホテルへ。
部屋の前は、一面の海。
その砂浜に横たわっていると、彼女を案じた男性が声を掛けてくる。
顔を見ると、知り合いの助監督アン・スンヒであった。
なんでも、ヨンヒが付き合っていた監督サンウォンの新作映画のために、ロケハンをしており、サンウォン監督もこの街に来ているという…。


洪常秀(ホン・サンス)監督が、女優・金敏喜(キム・ミニ)とコラボした近年の4作品を、日本でドーン!と一気に公開。

『自由が丘で』(2014年)で以来、久し振りにスクリーンで観る洪常秀監督作品である。

洪尚秀×金敏喜コラボ作品特集上映

4本とは、日本公開の順に、『それから』(2017年)、『夜の浜辺でひとり』(2017年)、『正しい日 間違えた日』(2015年)、そして『クレアのカメラ』(2017年)。

洪常秀は、韓国映画界で5本の指に入るお気に入り監督なので、作品の公開は嬉しいけれど、欲を言えば、もっとバラけて、小出しで公開してくれた方が、私にとっては好都合であった。

今回観た『夜の浜辺でひとり』は、2017年、第67回ベルリン国際映画祭に出品され、結果、銀熊賞・最優秀主演女優賞を獲得した作品ということもあり、4本の中でも、取り分け気になっていた。





本作品は、不倫の恋に疲れ、仕事を捨て、逃げるように海外へ身を隠した女優ヨンヒが、やがて帰国し、地方都市で、古い知人たちと再会し、静かに時を過ごす内に徐々に変化していく彼女の心象風景を描く人生再生(途上)物語


作品は、大きく2部構成になっており、前半はドイツ・ハンブルク、後半は韓国・江陵(カンヌン)と、東西2ヶ所の海辺の街を舞台に展開。


洪常秀監督作品には、映画監督、大学教授、映画学科の学生といった設定の人物がよく登場し、特に映画監督役の人物には、洪常秀監督自身の投影か?と匂わすものが多い。

で、洪常秀監督自身の私情が取り分け強く反映された半自叙伝にも思えるのが、本作品。
『正しい日 間違えた日』で、監督と主演女優という立場で出逢い、恋愛関係に発展していったと噂される洪常秀監督と女優・金敏喜(キム・ミニ)
妻子持ちの映画監督と22歳も若い女優との不倫疑惑が報道され、韓国国内で大バッシングが巻き起こったことは、日本にも漏れ伝わってきた。

その後、この『夜の浜辺でひとり』発表時、不倫関係を認めた二人。
洪常秀監督は、妻との離婚を進めるべく、裁判もしているらしいが、その後、離婚成立という話は聞きませんよねぇ?
まだドロドロしているのだろうか。


監督のスキャンダラスな私生活を重ね、好奇心の色眼鏡で本作品を観ることを、低俗と思う人も多いであろう。
でも、そもそも、洪常秀監督は、人気コミックなどをそのまま映画化する商業作品界の職人的映画監督とは異なり、自分自身や自分自身の今の感情を、詩にしたためるが如く映像で表現していく芸術家なのだと感じる。

だからこそ、作中に現れる私情の濃度が、他監督の他作品より高くなり、それが作家性にもなっている訳で、観衆が、作品に洪常秀監督自身を重ねたり、監督の心情を汲み取るのもまた自然かナ、と。


『夜の浜辺でひとり』は、不倫疑惑がスキャンダラスに報道されてから、その不倫関係を認めるまでの間に撮られた作品で、既婚の監督と恋に落ちた女優目線で描かれている。
もちろん、当時の様子をそのまま描いた再現ドラマなどではなく、私情や事実は“一要素”でしかない。

特に、主人公の女優ヨンヒが、自分自身を見つめ直す後半部分は、現実なのか、彼女の妄想なのか、その垣根が曖昧な白昼夢のようなシーンも結構あり、観ていて、ヨンヒの心の内がどうなのか、あれこれ想像を掻き立てられる。

鑑賞後、ずっと考えているのは、(↓)こちらのシーン。

夜の浜辺でひとり

江陵に留まることになり、宿泊を決めたホテルの部屋に、知人たちを招き入れると、バルコニーで窓ふきをしている男が一人。
この男、ヨンヒたちが窓際のテーブルにつきお喋りしている間も、ずーーーっとバルコニーに居るの。
スクリーンのこちら側から傍観している私の目には、明らかに不審人物なのだけれど、映画の中のヨンヒたちには、まるで見えていない透明人間のようで、誰一人この男について言及しない。
笑っちゃうくらい非常にシュールなシーン。
ヨンヒの深層心理を表しているようにも思う。じゃぁ、具体的に、…何??私の想像力、及ばず。
この男にどういう意味があるのか、皆さまはどう解釈なさいましたか…?!





出演者には、洪常秀監督監督作品でお馴染みの面々も多い。
中でも、絶対に外せない主演女優は…

夜の浜辺でひとり

先程からすでに何度も名前が出ている金敏喜(キム・ミニ)
扮するは、主人公の女優ヨンヒ。

2015年の一作目『正しい日 間違えた日』以降、立て続けに洪常秀監督作品に出演する金敏喜は、監督の創作意欲を刺激する存在なのであろう。

画家だと、その時々で交際している女性ばかりをモデルに描く人も多い。
例えばピカソとか、後世の我々が作品を見て、「この頃は〇〇が恋人だった時期」と判り易い。

洪常秀監督のやっている事って、つまりは画家にとっての絵画が、映画に置き換わっただけという気がする。
まず金敏喜ありきで、今度はこういう風に撮りたい、次はこんな内容でと、次から次へとアイディアが湧いてくるのでしょう。


本作品の主人公ヨンヒの職業が女優であると、私は最初から当たり前のように何度も書いてしまったけれど、実のところ、ヨンヒが女優で、不倫相手が映画監督である事は、映画後半まではハッキリとは明かされない。

前半で分かるのは、ヨンヒという一人の女性が、年の離れた既婚者との恋に疲れていることくらい。
「彼はもう若くはなく、頭も薄くなってきている」、「私は色んな男性と付き合い、遊んできたから、今はもう相手の容姿は重要ではない」といった具合に、これまで数々の浮名を流してきた金敏喜自身が重なる台詞も多々あるのだが、その時点では分からないヨンヒの職業が、後半明かされていくプロセスも、なかなか巧妙で面白かった。

そんな金敏喜の魅力は、親ほど年の離れた恋人が撮る作品の中で、ヨンヒの口を借り、「これまで散々遊んできた」と言ってしまえるほど、率直で、大胆な“不良”であること。
キャストそれぞれの素が出ているのではないかと思わせるモキュメンタリー群像劇『女優たち』(2009年)で、彼女を見た時にもそう感じた。
『お嬢さん』(2016年)での突き抜けた演技からも、それは窺える。
生真面目なな男性に限って、イイ子ちゃんより不良に振り回されてしまうもの。
60に手が届くおっさん洪常秀監督が、金敏喜という沼にズブズブ嵌っている様子が目に浮かぶ。


金敏喜をモチベーションに作品を作っているだけあり、本作品でも、彼女の魅力は充分引き出されており…

夜の浜辺でひとり

お陰で、第67回ベルリン国際映画祭で、銀熊賞・主演女優賞受賞!
ベルリンでこの賞を受賞した韓国人女優は、金敏喜が初めてなのですって。





自分のミューズをひたすた撮り続ける監督はかなり居て、そう言えば、中国の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督も、彼のミューズで、私生活では妻の趙濤(チャオ・タオ)とは、当初不倫。
前の妻と結婚した年に、『プラットホーム』(2000年)で趙濤と出逢い、いつの間にか(恐らく2009年頃)前妻と離婚し、2011年に趙濤と再婚している。

洪常秀監督の場合、妻との離婚が成立したところで、数年後に金敏喜に捨てられているという気がしなくもないのだけれど、その時はその時で、妻にも愛人にも見限られた初老のトホホな映画監督の物語を撮ってくれそうなので、私生活がどういう方向に転がって行ってもOKヨ。

この『夜の浜辺でひとり』は、登場人物たちがお酒呑んで、煙草吸って、取り留めのない会話をして、…と基本的には毎度のグダグダな洪常秀節
引きで捉えていたカメラが、いきなりググッと被写体にズームする映像なども、洪常秀監督作品のお約束通り。
これまでの洪常秀監督作品が好きな人なら、これも気に入るだろうし、今まで苦手だった人は、これにもやはり退屈するであろう。
洪常秀監督の作風が好みに合わない人が、監督と女優の不倫報道に食い付いて、この『夜の浜辺でひとり』を見たところで、その期待に沿うスキャンダラスでドラマティックな映画ではないので、肩透かしを食らう気がする。

私が洪常秀作品を好きなのは、見せ場盛り沢山で熱量の高い、いわゆる韓国映画のイメージとはまったく違い、ユルユルだからであり、この『夜の浜辺でひとり』も生温く、観終わってから、何やらジワジワ来ております。

ついでに、邦題についても述べておくと、この『夜の浜辺でひとり』でまったくOKなのだけれど、映画館でチケットを買う際、『夜の浜辺“に”ひとり』でしたっけ、それとも『夜の“海辺”でひとり』でしたっけ?と迷った。
まぁ多少間違っていたところで、大筋合っていれば、分かってもらえるけれど。

上海國際電影節から始まるモードな小ネタ

2018年6月22日、澤東(ジェット・トーン)が、長年マネージメントをしてきた俳優・梁朝偉(トニー・レオン)との契約を終了したと発表。青天の霹靂とはまさにこの事。
中華圏の俳優は、日本に比べ、移籍や独立が頻繁と見受けるので、20年も一つの事務所に任せっ放しの方が、むしろ珍しいのかも知れないけれど、梁朝偉&王家衛(ウォン・カーウァイ)のコンビは永遠にも感じていたので、驚いた。
事務所を辞めても、王家衛監督作品に出てくれるのだろうか。今のところ、梁朝偉本人はコメントを出していない。今後の動向に注目。





映画と言えば、2018年6月16日(土曜)に開幕した第21回上海國際電影節(上海国際映画祭)も、間も無く、今晩、金爵獎他諸々賞の発表があり、明日6月25日(月曜)で閉幕。
ここ日本では、カンヌやベルリンなどよりむしろ語られている気がする。日本の身近な有名人が沢山参加しているから、マニアックな映画ファン以外の人も、注目するのでしょう。


昨日、6月23日(土曜)は、『万引き家族(中国語タイトル:小偷家族)』の上映。
パルム・ドール受賞後、中華圏最速で観られるとあり、チケットがものの数十秒で売り切れた話題作。
この上映にあたり、監督の是枝裕和、出演者の松岡茉優、城桧吏が現地入り。

まずは、メディア合同の朝食会に参加。

モードな小ネタ

過去の是枝裕和監督作品からタイトルを取ったメニューが供されたらしい。


午後は、映画の上映と舞台挨拶。

モードな小ネタ

『万引き家族』は、上海でも大変な好評を博した模様。
一般の映画ファンのみならず、プロも結構観に行ったようですね。
『ウォーロード 男たちの誓い』(2007年)や『オペレーション・メコン』(2016年)等のプロデュースでも知られる黃建新(ホアン・ジェンシン)監督は、わざわざ北京から駆け付けたそうだし、『スプリング・フィーバー』(2009年)などでお馴染みの、あの女優・譚卓(タン・ジュオ)も大絶賛している…!

上映後の舞台挨拶も大盛況。
松岡茉優ちゃんは、私が行った六本木の公開記念舞台挨拶の時と同じように、お召し物が真っ赤。彼女の勝負服は赤なのでしょうか。
城桧吏クンは、若干11歳にして、大陸スケールのこんな大きな舞台に立つとは。
「可愛い」、「すでに美男子」と評判。
一度恥ずかしそうに「謝謝…」と簡単な中国語を口にしたら、会場がウォォ~ッと湧いた。
この模様、制作会社のフジテレビだったら、情報番組で流すでしょうかねぇ…?



日本人が参加した上海国際映画祭のイベントに関しては、中華圏のメディアだと、先日、当ブログにも記した、映画『解碼遊戲~Reborn』のプロモーションを行った山下智久が、人気の韓庚(ハンギョン/ハン・グン)が共演という事もあり、かなり取り上げられているが、日本だと完全にスルー。ジャニーズの闇は相当深そうだ…。


★  GUCCI

映画も色々とシガラミがあって、海外で話題になっても、局によって、取り上げられたりスルーだったり。
『OVER DRIVE』の新田真剣佑と、『猫は抱くもの』の沢尻エリカは、テレビで見掛けた。


特に沢尻エリカは、「グッチのドレスで中国のファンを魅了!」と多くのメディアに取り上げられましたね。

モードな小ネタ

具体的には、グッチの2018プレフォール・コレクションのお品。

モードな小ネタ

鬼才アレッサンドロ・ミケーレらしい、とーってもグッチな一着。
シルク地にフローラ・プリントをあしらったヴィンテージ風ドレス、鮮やかです。



ただねぇ、最近、日本の芸能人ばかりが立て続けにこれを着ているのを見て、目が慣れ過ぎてしまった。
日本では、ちょっとカブり過ぎているかも。

モードな小ネタ

キムタクの次女・Kōki(コウキ)は、モデルとしてのデビューを飾った<ELLE JAPON>7月号で、森泉は、6月21日放送の『徹子の部屋』で着用。
今、日本のグッチは、プレ・フォール・コレクションの中から、これを“押しの一着”として積極的に貸し出しているのでしょうか。


★  FENDI

ついでなので、今回は珍しくファッション関連のネタを続けます。

こちらもイタリアの老舗ブランドで、フェンディ。
そのフェンディが、2019年春夏コレクションで、傘とヘッドバンドを合体させ、手ぶらで雨から身を守れる画期的な商品、その名も“Fendi Headband Umbrella”を発表。

モードな小ネタ

「まるで笠地蔵!」、「絶対に体が濡れる」、「面白いけれど被る勇気はない」等々、すでに日本でも話題に。


…が、しかし、これ、フェンディが開発した画期的な面白グッズなどではない。
2014年、当ブログの北京旅行記に記したように…

モードな小ネタ

以前から、夏の中国では、観光地のお約束グッズ。

フェンディでは雨具として販売するらしいが、オリジナルの中国版は日傘として使用する人多し。
広大な中国では、観光地もひたすら広く、何も上空を遮る物が無いから、夏はキョーレツな太陽光が脳天を直撃。だからといって、普通の日傘を手に持っていたら、写真撮影をしたり、ガイドブックを開くのに不便。手ブラでいられ、なおかつ頭を日差しから守れるこの手の傘は、大変重宝なのだ。

この妙案にビビッと惹かれ、私も天安門広場で思わず2本購入。
大切に日本へ持ち帰り、試しに家でマネキンに装着してみた。

モードな小ネタ

一本10元也。
よくウォーキングをしている両親に上げようとしたら、拒絶された。



あの夏から4年も遅れ、ヘッドバンド・アンブレラを発表したフェンディ。
画期的でも何でもない。中国のパクリである。構造も全て中国の物と同じ。
しかも、本来日傘として使用する物を、雨傘にしてしまったから、体が濡れるという欠陥商品ヨ。

4年前、私のお土産に怪訝な顔をした母に、フェンディの新製品の写真を見せ、「私のお土産は時代を先取りし過ぎた。フェンディがようやく中国に追い付いた。せっかくのお土産をぞんざいに扱ったなんて、愚かだったわね」と嫌味を言ったところ、「でも、このフェンディのはシックな茶系で被り易いけれど、mangoちゃんが買ってきたのは、レインボーカラーで東京の街では浮きそうだったんだもん…」と母。
いいえ、フェンディのヘッドバンド・アンブレラも、東京の街で充分浮きますから…!


★  BALENCIAGA

露骨にパクらないまでも、ヨーロッパの一流メゾンが、“中国にインスパイアされちゃった感”モロ分かりの商品を出す例は、近年いくらでもある。


中でも、私が初めて見た時、思わず吹いてしまったのは、バレンシアガが2016年に発表し、以降販売を続けている“Bazar(バザール)”シリーズのバッグ。

モードな小ネタ

これを見て、何かを連想しませんか?

モードな小ネタ

そう、まるで、中国をはじめとするアジア全域でよく目にするチープなナイロンバッグ。

モードな小ネタ

出稼ぎの農民工が上京の時にお布団を入れたり、春節に里帰りする時にお土産をしこたま詰め込んでいたりする、アレ。
日本では、“華僑バッグ”と呼ばれているのを聞いたことがあるけれど、正式名称は不明。本場中国では、“蛇皮袋”、“編織袋”と呼ぶのが一般的なようだ。


バレンシアガのこのバザールシリーズはヒット。
でも、欧米人が持っているとファッショナブルに見えても、私のようなアジア人が持ったら、リアルに農民工ちっくになり過ぎる、危険なアイテムだと思っていたが、新宿伊勢丹で、これを持っている非常に洗練された中国人旅行者らしき人を見掛けたら、その人には、とても似合っていて、素敵だった。


芸能人にも愛用者。

モードな小ネタ

左は唐嫣(ティファニー・タン)、右は景甜(ジン・ティエン)。
唐嫣は、この形のこの色のみならず、クラッチバッグタイプを持っているのも見たことがあるので、このシリーズを気に入り、オトナ買いしたのかも知れない。

ちなみに、農民工御用達のオリジナルは、せいぜい数百円だろうが、バレンシアガのは、小さいのでも、日本での販売価格は20万円以上します。




どの分野でも、もはや、中国“が”パクるのではなく、中国“を”パクる時代になっている。
ファッション業界に関して、私が身をもって実感しているのは、以前は、日本で沢山開かれていた、ヨーロッパ一流メゾン主催のショーやパーティーが、いつの間にか日本からスーッと消え、中国へドッとシフトしていったという事。勢いのある場所と、無い場所を、露骨に思い知らされたのだ。
中国へ行く機会が増えた一流デザイナーたちが、現地で中国ならではの不思議な物に目を奪われ、インスパイアされちゃって、それを新商品に反映させるのは、ごくごく自然な流れ。
で、本来数百円の物も、一流メゾンのデザイナーの手にかかれば、数万円、数十万円に化けるのだから、オイシイですよねー。

6月だから水無月2種(+上海國際電影節続報とか諸々)

2018年6月16日(土曜)に開幕した第21回上海國際電影節(上海国際映画祭)。
開会式のレッドカーペットについては、こちらの“第21回上海國際電影節 勝手にファッションチェック♪”に記した通り。


BS12 トゥエルビで『王女未央-BIOU-~錦繡未央』の放送が始まって以降、当ブログに羅晉(ルオ・ジン)関連の検索でお越しの方が多いので、追加で(↓)こちらの画像も貼っておく。

上海国際映画祭2018

新作映画『八月未央~August Never End』の共演者と共にレッドカーペットに現れた羅晉。
同伴者は、左端の小柄な女性が譚松韻(タン・ソンユン)、長身の方が鐘楚曦(ジョン・チューシー)
当初この画像をなぜブログに載せなかったかというと、羅晉のモッコリした前髪が野暮ったいと感じたから。
もう少しマシなセットに出来なかったのだろうか。
ちなみに、お召し物はディオールです。

この映画、“未央”といっても、あのドラマ『王女未央』とは関係の無い現代劇。
日本も軽ーく絡んでおり、行定勲監督が芸術顧問として参加しているらしい。
主人公・未央を演じている鐘楚曦は、馮小剛(フォン・シャオガン)監督作品『芳華(ファンホァ)-Youth-』(2017年)で、スタアの仲間入りを果たした新進の女優さん。

いや、それより、レッドカーペットでまじまじと見てしまったのは、譚松韻の方である。
譚松韻と言えば…

譚松韻

『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』では“淳ちゃん”こと方淳意、また、最近だと、『旋風少女2(原題))』改め『私のツンデレ師匠様!~旋風少女2』に、吳磊(ウー・レイ)と微妙な関係の范曉瑩役で出演していた、あの譚松韻である。

私、譚松韻って、美貌より愛嬌勝負の人だと思っていたけれど…

譚松韻

ちゃんとおめかしすると、充分可愛かったのですね。
ゴメンなさい、御見逸れいたしました。


日本の映画人もその後、続々と上海入り。

上海国際映画祭2018

『君が君で君だ』松居大悟監督と池松壮亮


上海国際映画祭2018

『食べる女』の生野慈朗監督と広瀬アリス


アリスちゃんも、先に『OVER DRIVE』で参加した新田真剣佑も…

上海国際映画祭2018

上海へ行ったら、やはり外灘(バンド)での記念撮影はお約束。





他にも色々いるけれど、日本人の参加で、より大きな反応を得たのが、“山P”山下智久

サイバーミッション

現地で2018年8月3日公開予定の中国映画『解碼遊戲~Reborn』で、海外初進出。
共演は、韓庚(ハン・グン/ハンギョン)鳳小岳(リディアン・ヴォーン)李媛(リー・ユエン)

この新作映画の記者発表会が、昨日6月20日(水曜)、上海素凱泰酒店(ザ・スコタイ上海)にて行われた。
それに先駆け、6月18日、映画の公式微博で、山Pが英語でのメッセージ動画を公開。
内容は、ざっと、「僕には2ツの夢がありました。一つは、中国の映画人と仕事をすること、もう一つは悪役を演じること。その2ツの夢が叶いました。この新作映画『解碼遊戲』を携え、上海国際映画祭に参加します。皆さんにお会いすることを楽しみにしております」といった感じ。
日本の芸能人の英語は、いつも聞くのが怖い(…発音があまりにも悲惨で)。
山Pの動画も、恐る恐る見たら、これが意外にも上手かった。相当頑張ったと思う。
Yahoo!ブログには、秒拍が貼れないので、興味のある方は各自で探して御覧ください。

動画でファンを喜ばせた山P、記者発表会前日、6月19日(火曜)には現地入り。(東京→上海便で目撃情報あり。)
当日、発表会を数時間後に控えた正午前、ゲリラ的に映画公式微博でポツリと…

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「Hello, everyone. I am Yamashita Tomohisa!」と呟くと、ごくごく簡単なメッセージにも拘わらず、「ホンモノの山P?」、「中国へようこそ!」、「大好き!」と大反響。
あと、「西瓜ジュースを思う存分飲んで」というコメントが結構あるのだけれど、山P、過去に「中国の西瓜ジュースが好き」発言をしたの?
私も、夏場の中国では、絶対に西瓜ジュースを飲むので、親近感が湧きましたヨ。


で、現地時間午後2時頃、上海素凱泰酒店(ザ・スコタイ上海)にて、記者発表会開始。

サイバーミッション

登壇者は、監督、プロデューサー、そして出演者は、韓庚(ハン・グン/ハンギョン)李媛(リー・ユエン)山Pの3名。
鳳小岳(リディアン・ヴォーン)は欠席であった。

山Pは、「大家好、我是山下。」という冒頭の挨拶のみ中国語。
以降日本語で、「僕の役は、簡単に言いますと、世界で一番イヤな奴」と、演じた役を説明。


日本のバラエティ番組でもよく見るゲーム感覚の質問コーナーも。
3人のキャストそれぞれにホワイトボードを持たせ、司会者の質問に答えさせる形式。
「出演者の中で誰が一番女性にモテる?」の質問に、韓庚も山Pも、意外にも、女性である“李媛”と回答。

サイバーミッション

山Pは、漢字で“李媛”と書いただけで、司会者から、「中国の字も書けるのか!」と感心されていた。
(韓流スタアだと漢字を書けない人が多いだろうけれど、日本人は書けますよね。)
「李媛は立ち姿がカッコイイ」と山P。

サイバーミッション

李媛は173センチある上、この日は厚底の靴を履いていたので、確かに一番長身でカッコよかった。

「脱いだらスゴイのは誰?」の質問には、3人揃って、“鳳小岳”と回答。
私、山Pの日本語がよく聞き取れなかったのだが、「撮影中、いつも韓庚がジムに誘ってくれたんです。で、韓庚と小岳と僕の3人でジムに行って、服を脱いだところを見たら、凄かった!」みたいな事を言っていた。

こういうイベントにありがちな、「覚えている中国語は?」という質問もふられた山P。
これには、韓庚から教わった東北弁で「幹哈呢」とお返事。
これ、卓球の愛ちゃんも使っていませんでした?


さらに、キャスト一人ずつが、9連写用9ポーズを披露。

サイバーミッション

山Pは、ネタが尽きたのか、7ポーズ目と8ポーズ目が、なぜか同じであった。

昨今の日本では、見せることのない顔を、このイベントでは見せていた山P。
共演者とも仲良さそうであった。
ちなみに、李媛は、山Pのことを「安靜害羞的美男子(穏やかでシャイな美男子)」と言っていた気がする。
シャイなのに、あの9ポーズ、よく頑張りました。


こうして、映画『解碼遊戲』の記者発表会は終わったのだが、その日の夕方…

サイバーミッション

事前に開設していた個人の微博に、山P、初投稿。
ジャニーズって、日本では、所属タレントにSNSをやらせないんじゃありませんでしたっけ…?
中華圏のファン以上に、日本の山Pファンが喜んで微博に登録しそう。


なお、この映画『解碼遊戲~Reborn』は、これまで主に広告を演出してきた李海龍(リー・ハイロン)監督の長編デビュー作。
ゲームの世界を描くギーグたちのお話みたい。
古くは『キャノンボール』シリーズ、『ウィンター・ソング』(2005年)等、中華圏の作品も数多く手掛けているアンドレ・モーガンがプロデュースしているし、もしかして、私が想像していたより本格的なエンタメ作品なのかも知れない。

でも、「退社した元SMAPの女性マネージャーが取ってきた仕事だから、これをヒットさせるわけにはいかないと、ジャニーズ事務所上層部が日本公開に難色を示している」という噂は本当なのだろうか。
もし本当に、メンツに拘って公開阻止を目論んでいるのなら、ジャニーズの狭量さに呆れる…。
今回、一連のプロモーションを見ていても、この映画に対する山Pの思い入れの大きさを感じるし、これで公開の機会を潰されたら、山Pファンではない私でも、山Pが気の毒になるワ。

ちなみに、山P、中国のファンからの呼ばれ方は色々あるようだが、より一般的なのは、“山(やま)”を音訳した“亚麻/亞麻 Yàmá”みたいです。


なお、上海国際映画祭への日本人の参加はまだまだ続き、『万引き家族』の是枝裕和監督、松岡茉優、城桧吏は6月23日(土曜)、『3D彼女 リアルガール』の中条あやみ、佐野勇斗は6月25日(月曜)に登壇予定。(『3D彼女』は正確には上海国際映画祭ではなく、同時開催の公式イベント、日本映画週間での上映。)




山P繋がりで…

プロポーズ大作戦

山P主演ドラマの中国版リメイク『プロポーズ大作戦~求婚大作戰』が、ホームドラマチャンネルで始まりましたね。
早速、録画しておいた第1話を観たら、オープニングのインストゥルメンタル曲がオリジナル版と同じだったり、中国では不人気のはずの野球も、そのまま描かれていた。
かなりオリジナルに忠実なリメイクなのだろうか。
山Pが演じた主人公・岩瀬健は、EXO張藝興(レイ/チャン・イーシン)が演じ、役名は、オリジナル版から“岩 Yán”と“瀬 Lài”の発音を残し、中国っぽくアレンジした“嚴小賴(Yán Xiǎolài イェン・シャオライ)”。


大陸ドラマと言えば…

開封府

ここ数日、当ブログは、『開封府 北宋を包む青い天~開封府傳奇』関連検索の訪問者が急に激増。
不思議に思ったら、6月19日(火曜)から、BSジャパンで放送していた。
BS効果、顕著である。
放送開始したばかりなのに、“開封府 最終回”、“開封府 ネタバレ”で検索する人が多いのも少々意外。
皆さま、せっかちなのですね(笑)。真っ新な状態で鑑賞することをお勧めいたします。


すでに『開封府』鑑賞済みの私が、今最も楽しみにしているドラマは…

琅琊榜・弐

衛星劇場で放送中の『琅琊榜(ろうやぼう)弐 風雲来る長林軍~琅琊榜之風起長林』
折り返し地点を過ぎ、26話まで来てしまった。
ここから先は、一話、また一話と残りが減り、ゴールに近付いていくのだと考えると、すでに淋しい。
そして、黃曉明(ホァン・シャオミン)扮する蕭平章が、どうもあちらの世界に召されてしまいそうというイヤな予感しかしなくて、次を観るのが怖い…。
このドラマでは、カッコイイ黃曉明を久し振りに見て、あのキャラ気に入っているのよねぇ…。




ついでに、近々放送の要録画番組を一本だけ。

要録画番組

6月23日(土曜)、テレビ東京で放送の『世界!旅々さま~ずinマカオ』
さま~ず一行が世界を旅する番組で、昨年の韓国・平昌に続く第2弾は、澳門(マカオ)。
世界遺産、インスタ映えスポット、絶叫アトラクション、超大型ショッピングモール、豪華ホテル、そしてマカオ料理等々を、さま~ずと共に、大島麻衣、川村エミコ、島田秀平らが紹介。





さて、6月の和菓子の代表格と言えば“水無月”でございます。
外郎生地の上に小豆をのせ、三角に切り分けたお菓子。
上部の小豆は魔除けを意味し、三角形にするのは、暑気を払う氷に見立てている。
正確には、一年のちょうど折り返し地点にあたる6月30日に食べ、上半期の罪や穢れを祓い、これからの下半期の無病息災を祈願するとのことだが、東京の和菓子屋さんでは、7~8月まで販売している所が多いように見受ける。
ここには、最近食べた水無月を2種。


★ 鈴懸:鈴乃水無月

鈴懸:鈴乃水無月

大きさは、一番長い辺で約8センチ、厚さ約2センチ。


一つめは、鈴懸(公式サイト)“鈴乃水無月”

下の外郎は、弾力があっても固過ぎず、歯切れもよく、甘みほんのり。
すあまのような素朴で懐かしい甘さ。
ほっくりと炊かれた上部の小豆は、甘さ控えめ。

“水無月”と聞き、イメージする通りの伝統に忠実な水無月のスタンダード。


★ 虎屋:水無月

虎屋:水無月

大きさは、一番長い辺で約8センチ、厚さ約2センチ。


もう一つは、虎屋(℡:0422-22-2083)の“水無月”
羊羹で有名な、かのとらやではありません。
こちらは、吉祥寺の街角にある小さな和菓子屋さん。

ここのは、見た目からして、一般的な水無月と違う。
通常、上部にのっているはずの小豆が、生地でサンドされており、さらに、葉っぱが添えられている。

外郎生地は、他店の物に比べ、透明感があり、フルッと適度に柔らか。
小豆は、生地の間に挟まれているせいか、量が少なく見えたのだけれど、実際には、そんなことなく、甘さも程よく、きちんと存在感あり。


ここ数年の間に食べた東京の水無月で、私の口に一番合うのが、この虎屋の物で、一番マズかったのが、羊羹のかのとらやの物。
白濁したうどん粉の固まりみたいな外郎生地を使っている水無月が嫌いなのだけれど(羊羹のとらやのが、まさにそれ)、虎屋のこれは、透明感があり、その見た目通り、食感もフルッと弾力のある柔らかさで、絶妙。
虎屋は、桜餅も、青柳正家と並び、東京一美味しいと思うし、街角に佇む小さな和菓子屋さんと侮れない。

映画『Visione -ビジョン-』

Vision

【2018年/日本・フランス/110min.】
奈良県吉野。
猟犬のコウと静かに暮らす山守の智に、老女のアキが言う、「今日は山へ行くな、殺生はするな。明日は春日神社へお参りに行け」。
アキの言いつけに従い、春日神社を訪れた智に、女性が声を掛けてくる。
ジャンヌというフランスのエッセイストに随行する通訳の花であった。
ジャンヌがこの地へやって来た目的は、“Vision(ビジョン)”を探すため。
“Vision”、それは千年に一度姿を見せ、人類の苦痛を取り去ると言い伝えられている幻の植物。
そんな物は知らないと答えた智だが、宿もなく困っている二人を、しばらくの間、自分の家に泊めてあげることを承諾。
間も無くして、ジャンヌに会ったアキは、「あんただったんだね」と、まるで彼女の訪れを知っていたかのような口調で迎え、ジャンヌもまた目の不自由なアキと、言葉の壁を越え、心で通じていく。
数日後、通訳の花が去り、ひとつ屋根の下、二人きりになると、無口な智もポツリポツリと話すように。
身も心も距離を近づける二人だが、ジャンヌは吉野に戻ることを約束し、フランスへ一時帰国。

吉野の山が色付く秋。
約束通り智の家に戻って来たジャンヌは、そこで、彼女の不在中いつの間にか智と暮らし始めていた鈴という若い青年を目にする。
山の中で傷付き意識を失っていた鈴を智が見付け、家に連れ帰ったのだという。
こうして始まった、智、鈴、ジャンヌ、三人の生活。
鈴と過ごす内、ジャンヌに、岳という猟師の男との記憶が重なってゆく…。


河瀨直美監督、長編作品10本目にあたる最新作を鑑賞。

是枝裕和監督のパルム・ドール受賞作『万引き家族』と公開が重なったため、影が薄くなってしまったけれど、おフランスのあのジュリエット・ビノシュが主演した、注目に値する作品である。

なんでも、河瀨直美監督は、昨2017年5月、第70回カンヌ国際映画祭に出席した際、ジュリエット・ビノシュと御対面し、意気投合。
ジュリエット・ビノシュが、河瀨直美監督の作品に出たいと話したことで、翌6月には、新作の制作が決定。
すぐさま河瀨直美監督はアテ書きで脚本の執筆を始め、9月初旬にはクランクイン。
12月初旬にクランクアップし、2018年6月、こうして公開の運び。

うわぁぁぁ~、監督ってば“すぐやる課”!(←若い子は知らないだろうが、昔、こういう言い方があった。)
有名女優が口にする「是非監督の作品で出たいです」などという言葉を、社交辞令とは受け止めず、前向きに“本心”と捉え、相手に心変わりするスキなど与えず、企画を一気に進め、クランクイン!
日本人離れしたこの攻めの姿勢とスピード感が、世界でやって行ける秘訣かも知れない。





本作品は、フランスのエッセイスト・ジャンヌが、千年に一度出現し、人類の苦痛を取り去るという幻の植物“Vision(ビジョン)”を探しに吉野にやって来て、そこに暮らす人々と交流を始めたことで、人と自然、生と死が、時空をも超え交差していく様子を神秘的に描く物語。

説明したり、ジャンル分けするのが、とても難しい作品。

舞台は、河瀨直美監督の故郷で、これまでにも多くの作品が撮られてきた奈良。
その中でも、荘厳な大自然を有する吉野。
主人公のエッセイスト・ジャンヌは、列車に乗って、この地へ向かう。
そして、トンネルを抜けると、その先にあるのは吉野。
トンネルの向こう側とこちら側では全然違い、この吉野だけが、まるで他から隔離された神秘の異世界。
「トンネルを抜けると雪国だった」(By川端康成)ならぬ、「トンネルを抜けると仙郷だった」って感じ。
ジャンヌはその異世界で、山守の智や、老婆アキと出逢う。
アキは、ジャンヌがやって来ることを知っていたかのようだし、彼女がが探している幻の植物・Visionについても知っているよう。
ジャンヌとアキは、初対面で、共通の言語を持たなくても、魂のレベルで通じているように見える。
口数が少なく、内面が読みにくい智もまた、ジャンヌと身も心も繋がってゆく。

そんなジャンヌが、おフランスへ一時帰国するまでが物語前半で、秋にまた吉野に戻ってきてから、物語は後半戦に突入。

後半では、他から隔離され、何百年も前から凍結されたままかのような異世界・吉野に、小さな変化。
いつの間にか、智の家に、鈴という青年が居ついていたのだ。
自分の留守中に現れ、智と親しくしている鈴に対し、戸惑い、嫉妬しているようにも見えるジャンヌ。
ここから、智、鈴、ジャンヌの三角関係の物語に発展していくのかと予想したら、そんな単純なラヴストーリーではなかった。

鈴を通し、ジャンヌの脳裏に、どんどん蘇ってくる過去の記憶の数々。
ここから、物語は、現在と過去が交差。
過去にジャンヌは(ジャンヌ本人かも知れないし、ジャンヌに魂を引き継がせた別人かも知れない)、岳という猟師と恋に落ちるも、岳は死亡。
岳亡きあと、ジャンヌが一人で産み落とした彼の子は、岳の両親のもと成長し、やがて、山中で意識を失ったいるところを山守に助けられ、そのまま山守の家で暮らし始め、それがまるで運命の巡り合わせだったかのように、実母との再会を果たす。
そう、その子こそ、鈴なわけ。
人類か自然界かに関係なく、そこに宿る命の継続や再生を表したかのような、神秘的で不思議なお話。


この物語後半に、頻繁に出てくる言葉が“素数 Prime Number”。
「素数は他とは交わらない」といった具合に。
そして、ジャンヌが探しているというVisionもまた素数と関係し、姿を現す周期が997年だという。

“素数”ねぇ、「・・・・・。」
その昔、学校でそんな物を教わった気もするけれど、これっぽっちも覚えていないので、映画鑑賞後、調べちゃいましたヨ。
簡単に言うと、“素数=1より大きな整数で、1とその数以外で割れない数”。
で、千以下で、千に一番近い素数が997とのことなので、Visionが現れる周期は997年なのであろう。
映画『Vision』は、延々と紡がれる命を描きながら、他とは決して交わらない物が、他と交わったことで起きる化学反応をも描いている作品という気がしてきた。




キャストでは、先程からすでに名前が出ている主演女優は、こちら(↓)

Vision

奈良の吉野にやって来たフランスのジャーナリスト、ジャンヌを演じるジュリエット・ビノシュ

ジュリエット・ビノシュは、アジアの監督とのコラボにも積極的で、
過去には、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』(2007年)や、アッバス・キアロスタミ監督の『トスカーナの贋作』(2010年)で主演を務め、近々、是枝裕和監督の最新作にも出演予定。
でも、過去2作品は、前者はフランス、後者はイタリアが舞台、是枝裕和監督最新作も国外での撮影が予定されているとの事なので、吉野の山奥に佇んでいるジュリエット・ビノシュが見られるだけでも、この『Vision』は新鮮かつ貴重かも。
世界的にメジャーな女優となった今でも、アジア人監督の、しかも、大ヒットが見込めない難解な作品に挑む姿勢には、歩みを止めない女優魂を感じる。


他のキャストも見ておきます。

Vision

ジャンヌを家に泊める山守の智(とも)に永瀬正敏、智が親しくしている盲目の老婆アキに夏木マリ
智に助けられ、共に暮らすようになる青年・鈴(りん)に岩田剛典、通訳兼アシスタントとしてジャンヌに同行する花(はな)に美波、過去にジャンヌと関係があった猟師の岳(がく)に森山未來、そしてもう一人の老猟師、源(げん)に田中泯など…。

登場人物の名前が皆、漢字一文字に納まるシンプルな物にまとめられているのは、共演者ジュリエット・ビノシュをはじめ、外国人にも覚え易いことを意識して命名したのだろうか?
(“H”から始まる“花(はな)”だけは、フランス人には発音しにくいと思うけれど。)
過去の河瀨直美監督作品で、ここまで“一文字氏名”にまとめられていた作品は無かった気がする。


永瀬正敏は、『あん』(2015年)、『光』(2017年)、そしてこの『Vision』と河瀨直美監督作品に立て続けに3本出演し、今やすっかり“河瀨直美監督御用俳優”。
河瀨直美監督が、カンヌでジュリエット・ビノシュに出逢った時、一緒にその場に居て、新作の企画に最初から組み込まれていたのも永瀬正敏。
もちろん監督は、智の役を永瀬正敏でアテ書き。
その智は、前2作品で演じた役と、“”無口で無骨”という共通点。
河瀨直美監督にとって、永瀬正敏は、“ニッポンの不器用な中年男を演じさせたら右に出る者はいない”と思わせる俳優なのかも知れない。
具体的には、智は、48歳で、吉野に暮らし20年という設定。
元々山守だったわけではなく、若い頃は都会で暮らし、何かしらの事情で生活を一変させたという過去が垣間見える。


実は、ジュリエット・ビノシュや永瀬正敏以上に、強烈な印象に残ったのは、夏木マリであった。
見た目からして普段とはまるで違い、ノーメイクでスポーツ刈り。
扮するアキは、なんか巫女みたいなシャーマンみたいな謎めいた老婆で、智に年齢を尋ねられると、「千年ほど前、胞子が放たれた時に生まれた」と答えるの。
約千年前といったら、平安時代ヨ(笑)。
日本でここまでの御長寿って、このアキ以外に、“10万歳+地球年齢”で年を答えるデーモン小暮閣下くらいしか思い浮かばない。
現実には有り得ない超高齢者だが、夏木マリ扮するアキは、ごく自然に人類離れしているというか、妖怪の域に達している雰囲気があるから、彼女が言う「千年ほど前の生まれ」も、へぇー、そうなのね、とすんなり受け入れてしまった。

夏木マリには、彼女が長年続けている舞台活動の延長線上にあるかのような踊りのシーンも。
本作品には、他にも、舞踏家としても活動する森山未來や田中泯も出演しており、彼らも同様に、作中、独特な踊りを披露。
映画の中に、舞台的な演出があると、そこだけワザとらしく浮いて見え、普段あまり好きではないのだが、本作品の場合、そういう踊りが一種の“祈祷”のように見え、作風に馴染んいた。


日仏混血の美波は、2014年、文化庁の芸術家研修でパリに一年留学した後も、日仏両国を拠点に、パリと日本を行き来しているらしい。
本作品で久々に見た美波は、フランス語を活かし、ジャンヌに随行する花という通訳を演じている。


他にも、『光』に続き、白川和子が、岳の母/鈴の祖母役で出演していたり、河瀨直美監督作品常連/初登板に関わらず、基本的には、作風に合った納得のキャスティング。
…が、唯一、岩田剛典だけは、出演を知った時、当初、“河瀨直美監督作品的ではない”と違和感を覚えた。
そうしたら、エンディングで一番に「エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO」とクレジットされていたので、キャスティングには何やらオトナの事情もあったのかしら、…と勘繰ってしまった。
でもねぇ、岩田剛典が演じる鈴は、実のところ、全然悪くなかった。
“EXILE”と聞いただけで、何かギラギラした物を想像してしまいがちだけれど、鈴からはそういうギラつきが抜けていて、ピュアな少年のような雰囲気が感じられた。


あと、これ、お犬様映画です。

Vision

智が一緒に暮らしている猟犬のコウ。
<西遊記>や<封神演義>に登場する二郎神がつれている神犬・哮天(こうてん)を重ねた。
そのコウが忽然と消え、死んで発見されるシーンが、あまりにもリアルだったため、撮影中急死したから、急遽脚本を書き換え、死体を使って撮ったのではないかと想像。

Vision

が、その後、大阪で行われた舞台挨拶に、監督&キャストと共にコウが登壇したと知った。
コウ、生きてたのですね。ホッ…!
じゃぁ、作中、まるで死んだかのようにグッタリ微動だにしなかったのは、演技だったのか…?!
犬って、あそこまで演技するものなの…??
ちなみに、このコウは紀州犬とのこと。
昨今、“紀州”と聞くと、“紀州のドン・ファン”を思い浮かべてしまう私は、『Vision』向きではない俗な人間なのかも知れません。





『あん』、『光』と、分かり易い作品が続いていたので、河瀨直美監督は今後その路線で行くのかとも思っていたけれど、『Vision』でその想像を裏切った。
その裏切りを、肯定的に捉える人も否定的に捉える人もいるであろう。
私は、肯定的な方。
大好き!と手放しの絶賛はしないが、鑑賞後も「あそこは何を意味していたのだろう」等と考えを巡らせ、思いを引きずったという事は、何かしら私の中に爪痕を残した作品であり、鑑賞中瞬発的に楽しんでも、直後に忘れてしまうようなお気楽な作品より上等に思える。

単純に、吉野の自然や神秘を堪能する作品としても良し。
日本国内で、シャーマンとか自然崇拝とか超自然な存在との交信等々が違和感なくハマる場所というと、私は真っ先に沖縄を思い浮かべるけれど、こういう『Vision』のような作品を観ると、吉野の神秘もまた相当なものだと、圧倒される。
『Vision』は、吉野の大自然無くして成立しない作品で、舞台が吉野だからこそ、物理的に説明がつかない非現実的なお話が、あたかもそこで本当に起きているかのように淡々と綴られ、“現代の神話”になっている。
ちなみに、私のスピリチャルな物への関心は、限りなくゼロに近い。
そんな超現実派の私でも、自然の神秘に畏敬の念を抱いてしまう作品であった。

10人中7人は、退屈して、途中で爆睡してしまいそうなので、敢えて人には勧めないけれど、こういう作品に興味がある人なら、公開している内に、是非映画館の大スクリーンで。

第21回上海國際電影節 勝手にファッションチェック♪

上海國際電影節2018

昨日、2018年6月16日、第21回上海國際電影節(上海国際映画祭)が開幕。
開会式のレッドカーペットは、“ながら”ではあるけれど、一応中継を見た。
映画産業も勢いのある国の勢いのある映画祭なので、やはり華やかで、見ていて楽しい。


では、早速、当ブログ恒例企画(?)、“勝手にファッションチェック♪”行っちゃいます。

★ 審査員団

上海國際電影節2018

私が溺愛する張震(チャン・チェン)は、カンヌに引き続き上海でも審査員。
昨日、当ブログに記したように、白玫瑰理髮店(白バラ理髪店)!での散髪を済ませ、今年の審査員長・姜文(チアン・ウェン)のもと、秦海璐(チン・ハイルー)ら、他の審査員と共にレッドカーペットに登場。

上海國際電影節2018

お召し物はブリオーニ。全てブラックでまとめております。

ちなみに、この審査員団の中で、唯一の女優さんである秦海璐は、この日、ローズカラーのアレクシ・マビーユを身にまとい、華やかであった。

本当は、この審査員団の中に、日本の河瀨直美監督もいるはずなのだけれど、昨日はどういう訳か姿が見えず。自身の監督作品『Vision ビジョン』が公開されたばかりなので、忙しいのでしょうか。


実は、姜文も、審査員長を務めるだけではなく、監督最新作『邪不壓正~Hidden Man』のプロモーション。

上海國際電影節2018

画像左から、彭于晏(エディ・ポン)、許晴(シュイ・チン)、姜文監督、そして監督の妻で出演もしている周韵(ジョウ・ユン)、廖凡(リャオ・ファン)。

彭于晏は、許鞍華(アン・ホイ)監督の『明月幾時有~Our Time Will Come』に続き、姜文監督最新作にも出演とは、映画俳優として大出世ですねー。
これ、大好きな廖凡も出ているし、とても楽しみ。

★ 男子の部

上海國際電影節2018

今回レッドカーペットに登場した男性陣の中でも、微博などで語られまくり、取り分け注目度が高いと見受けたのが、李易峰(リー・イーフォン)と吳磊(ウー・レイ)の二人。
二人とも、現地で、若い女の子に大人気なのであろう(李易峰はもう30過ぎたけれど)。

李易峰は『動物世界~Animal World』、吳磊は『阿修羅~Asura』をそれぞれ宣伝。
吳磊と一緒に映っているのは、共演の張藝上(チャン・イーシャン)と、映画に登場する南瓜のキャラクター。
ファンタジー映画らしいのだが、メイキング映像を観たら、かなり本格的だった。
他にも梁家輝(レオン・カーフェイ)や劉嘉玲(カリーナ・ラウ)といった大物も出ているし、日本にも入って来るかも…?

ちなみに、吳磊、この日のお召し物は、正面から見ると、シンプルなスーツだけれど…

上海國際電影節2018

背中に大胆な刺繍。一目瞭然のグッチです。
吳磊くん、成長しましたよねぇ。しみじみしちゃう…。
最近、高校を卒業したばかりで、この日、司会者からの「大学はどこ狙っているの?」という質問に、「北・京・電・影・学・院!」と元気にお返事。
「きっと受かるヨ」と言われると、はにかみながら「あ、あ、ありがとうございます」と答えていた。
(出演作『スマート・チェイス』の項にも記したように、吳磊はすでに北京電影学院の芸術試験を首席で合格。ここまで行けば、もう落ちることはないと思う。)


男たちがカッコイイ!と言えば、こちら(↓)

上海國際電影節2018

徐克(ツイ・ハーク)監督最新作『狄仁傑之四大天王~Detictive Dee:The Four Heavenly Kings』チーム。
タイトルからも判るように、狄仁傑を主人公にしたあのシリーズ、『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』(2010年)、『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』(2013年)に続く新作。
私、このシリーズ、全然好きじゃないのだけれど、こうやって並んだ見目麗しい男性キャストを見てしまうと、最新作もブーブー文句たれながらもまた観てしまいそう…。

お召し物は、趙又廷(マーク・チャオ)、林更新(ケニー・リン)がディオール、馮紹峰(ウィリアム・フォン)がドルチェ&ガッバーナ、そして阮經天(イーサン・ルアン)がトム・フォード。
皆、長身でスタイルが良いから、ビシッと決めると、益々素敵。

★ 女子の部:とにかく人目を引いたで賞

上海國際電影節2018

趣味に合うとか合わないとか、そんなチマチマした事はもー超越して、華やかに装うという点においては、香港明星は突出している。

今回も、香港のお姐さまお二方、鄭秀文(サミー・チェン)と劉嘉玲(カリーナ・ラウ)に、“とにかく人目を引いたで賞”を捧げたい。
色目もテイストもかなり異なるが、お二方ともグッチ。
おみ足を大胆に透かした劉嘉玲お姐サマは、迫力であった。
日本だと、女優のような特殊な職業に就いていている人でも、52歳でこの食卓用フードカバー風のスケスケ(で、上はレトロな水着風)は躊躇っちゃうであろう。

★ 女子の部:ベスト・ドレッサー

上海國際電影節2018

女優陣からは、素敵で印象に残った人も、3人だけ絞って挙げておく。


張藝上(チャン・イーシャン)

吳磊と『阿修羅~Asura』で共演の前出の張藝上は、ミカエル・ディーのガウン。
ふわふわでヌーディーなカラーは妖精のようで、22歳の若い彼女にお似合い。


馬伊琍(マー・イーリー)

馮小剛(フォン・シャオガン)プロデュースで、姚晨(ヤオ・チェン)とのダブル主演作、『找到你~Lost and Found』が、コンペティション部門に入選し、レッドカーペットに登場。
この画像は映りが良くないけれど、上は女性らしいベアトップ、下はパンツで後方に長いトレーンを被せたランヴァンの新作で、足元にはジャンヴィート・ロッシのヴィヴィッドなブルーのスエードのハイヒールを合わせ、マニッシュでオトナっぽく、カッコ良かった~。
ちなみに、現在日本で放送中の『琅琊榜(ろうやぼう) <弐> 風雲来る、長林軍~琅琊榜之風起長林』に、萊陽侯蕭元啟役で出演している吳昊宸(ウー・ハオチェン)もこの映画に出ており、昨日は一緒にレッドカーペットに登場していましたヨ。


李冰冰(リー・ビンビン)

李冰冰は、日本でも秋に公開予定の中米合作映画『MEG ザ・モンスター~巨齒鯊』のプロモーション。
ハリのあるマスタードカラーのシルク生地で、ウエストに巻いた大きなおリボンが印象的なこのガウンは、ディーチェ・カヤック。
これは、本当ーーーっに素敵だった…!今年の上海国際映画祭のmango的ベストドレッサー賞。

で、この李冰冰、『MEG』で共演のジェイソン・ステイサムと一緒に登場したのだけれど…

上海國際電影節2018

ジェイソン・ステイサムは、足元がお便所スリッパのようなサンダル履きだったのが、話題になっていた。


欧米の人気スタアでは、他にも…

上海國際電影節2018

ニコラス・ケイジやクリストフ・ヴァルツといった大物が来場。
(この画像のニコラス・ケイジ、なんか蝋人形っぽい。ホンモノか…?! 笑)

★ 日本勢

日本映画もとても人気で、沢山上映される上海国際映画祭。
でも、開会式に誰が出席するかまでは、私は知らなかった。

上海國際電影節2018

レッドカーペットに登場した瞬間、すぐに確認できたのは、『イマジネーションゲーム』の板野友美&久本雅美。
あと、『きらきら眼鏡』からは、安藤政信は判ったが、同行している他の人たちが誰なのかは判らず。
後になって、それが共演者の金井浩人や池脇千鶴だったと知った。

正直言って、日本勢は、やはり地味なのだ…。
私は、ルックスが中華圏でもウケるであろう中条あやみちゃんに、是非レッドカーペットを歩いて欲しかった。
中条あゆみちゃんの訪中は決まっているが、上海国際映画祭と同時期に開催される映画祭の正式イベント、2018上海・日本電影周(2018上海・日本映画週間)で、出演作『3D彼女 リアルガール』が上映される時に上海へ渡るようだ。


まぁ、そんな訳で、ちょっぴりガッカリしてしまった私だけれど、意外とイイ線行っていたのが、こちら(↓)

上海國際電影節2018

『OVER DRIVE』を引っ提げ参加の新田真剣佑!
中継をボーっと見ていたら、会場奥の方から、“全身緞帳”みたいなド派手な青年が出てきて、誰コレ?!と思わず画面に食い付いたら、新田真剣佑であった。
私の目を奪ったお召し物はD&Gらしい。
確かに私は若干引いてしまったが、人民の皆さまは大して驚いていない様子。
それどころか、中継の弾幕には、「この人誰?カッコイイ」等といった文字が。
私が見ていた限り、日本人俳優の登場で、反応があったのは新田真剣佑だけ。
身長が充分でないのだけが、高身長俳優が多い大陸芸能界では、ちょっと不利になりかねないけれど、父親アクションスタアだし、中国語ダメでも、取り敢えず英語なら問題ないし、まだまだ若いし、貪欲に中華圏にも進出していただきたい。
中継の反応を見ていたら、私、まっけんゆーが、ニッポンの光って気がしてきたワ。
新田真剣佑サマ、影ながら応援いたします。





なかなか楽しいレッドカーペットであった。
皆さまは、中継を御覧になりましたか?

大陸ドラマ『旋風少女2(原題)~旋風少女 第二季』改め『私のツンデレ師匠様!』

旋風少女2

元武道が盛んな中国・岸陽。
松柏道館では、若白を失った悲しみを乗り越え、二番弟子の亦楓が先頭に立ち、門下生たちが日々練習を重ねていた。
ただ一人、若白の死を未だ認められないでいる百草。
「若白先輩は、アメリカで病気を治療中。私が世界選手権に出場するのを見れば、きっと岸陽に戻ってきてくれる…。」
そう信じてやまない百草は、悲しみを心の奥に封じ込め、ガムシャラに練習を続けるが、無情にも、推薦で世界選手権に参加する権利は、賢武道館の方婷宜の手に渡ってしまう。

ちょうどその頃、長安という男性が松柏道館にやって来る。
長安は、アメリカ風雲堂館の元首席教官という輝かしいキャリアの持ち主。
医学を学ぶためアメリカへ渡った初原先輩が、コーチ不在の松柏道館にちょうど良いと考え、わざわざ頼んで新コーチに就任してもらったのだ。
「初原先輩の推薦なら、きっと素晴らしい指導をしてくれるに違いない」と皆信じ、この長安を迎え、新生松柏道館は再スタートを切るも、これがとんだ失敗。
長安の横暴な態度に、不満を募らせていく門下生たち。
若白に対し心ない言葉を吐いた長安に、百草もまた反感を覚えるが、彼の提案を聞き、俄然興味が湧いてくる。
風雲堂館が世界中で開催している美少女マッチで勝ち続ければ、通常の試合より多くのポイントを稼げ、世界ランキング10位に入ることも夢ではない、つまりは、推薦なしでも、世界選手権に参加できる可能性があるというのだ。
百草は、このチャンスに賭けるべく、長安の厳しい特訓についていく覚悟を決める…。


2017年10月末、ホームドラマチャンネルで始まった『旋風少女2(原題)~旋風少女 第二季』が、年を跨ぎ、2018年6月、全33話の放送を終了。

現地でヒットした前作『ときめき♡旋風ガール~旋風少女 第一季』が、私には全然響かなかったので、本当なら、続編は迷わずスルーするところなのだけれど、なんと、この続編は、日本絡みなので、ついつい観てしまった…。

で、結果的に、やはり観る程の物ではなかったと思っている。
誰もがお気付きでしょうが、これ、ティーンのお嬢さん向けドラマです。
私は明らかにターゲット圏外。
思い入れなどこれっぽっちも無いが、前作についても記したことだし、続編も簡単に記録しておく。

★ 概要

前作同様、原作は、人気女性作家・明曉溪(ミン・シャオシー)の小説で、監督したのは、香港の成志超(ゲイリー・シン)

オリジナル版では全36話だが、日本版は33話に再編集。
どうも釈然としないその件については、このエントリの最後で。


前作との大きな違いは、主人公・戚百草を演じた胡冰卿(フー・ビンチン)と、彼女の憧れの先輩・若白を演じた楊洋(ヤン・ヤン)という、よりによってメインキャスト2名が選手交代。

旋風少女

楊洋はスケジュールの都合、胡冰卿は所属事務所・唐人の契約違反ではないか等、色々と憶測も飛んだが、ハッキリした降板理由は闇の中。
楊洋に関しては、続々編『旋風少女 第三季』でカムバックするらしい。


前作とのもう一つの違いは、日本でのタイトル。
前作も本作も、原題は『旋風少女』で変わりないが、邦題には変化。
前作が『ときめき♡旋風ガール』だったので、続編は『ときめき♡旋風ガール 2』かと思いきや、実際には、『旋風少女2(原題)』なの。
放送開始前にこの邦題を見て、“(原題)”と添えられていたので、仮題なのかと思ったら、放送が終了するまで結局ずっと『旋風少女2(原題)』であった。

つまり、“(原題)”も込みでの邦題という事…?
本作品と限らず、海外作品を日本に紹介する場合、邦題の趣味が悪かったり、原題とあまりにも掛け離れていると、作品や出演俳優のファンから、不服の声が上がるものである。
なので、原題をそのまま邦題にし、しかも“(原題)”と付けて、それが原題のままであることを強調すれば、苦情に対し予防線を張れる。これは今までに無かった発想。

…と感心したのも束の間、結局これはやはり仮題で、正式な邦題は…

旋風少女2

『私のツンデレ師匠様!』。あらら…。
このドラマの配給を手掛ける二社の内の一社、コンテンツセブンは、韓流系の会社。
本作も、大陸ドラマ『旋風ガール』とは別モノのイメージを作り、“韓流アイドルもの”路線で押したいのかも。

★ 物語

若白先輩を失ってしまった松柏道館に、新たに長安というコーチがやって来るが、若白とはあまりにも違う長安の無慈悲な指導に、百草をはじめとする門下生たちは戸惑い、道場の雰囲気は険悪になるも、やがて長安の指導の的確さと、彼の本当の優しさを知り、仲間意識が高まり、試合にも勝ち進み、また、百草との淡い恋にも発展していく様子を描く、若者たちの武道青春物語


前作は、視聴者に、若白先輩の死を匂わせたまま、悲観的に幕締め。
本作では、若白先輩とは似ても似つかない冷酷な鬼コーチ長安が着任してスタート。
物語は、長安が前に所属していたアメリカ風雲堂館の陰謀を背景にしながら、百草が、若白先輩に会いたい一心で、新コーチ長安のもと、名選手になっていく成長物語や、苦手だったその長安と徐々に心を通わせていく淡い恋物語が描かれる。

前作では、百草の若白先輩への気持ちを知りながらも、彼女をサポートし続けた優しいお金持ち・方廷皓が、本作でも、長安が百草に接近することを焦りながらも、彼女に一途なのだが、色々あって、後半、一転して“可愛さ余って憎さ百倍”…!
あんなに優しかった方廷皓が、百草への憎悪から、闇落ちしていくのが、前作と随分違う点。

★ 日本

旋風少女2

東京で開催される美少女挑戰賽(美少女マッチ)に出場するため、百草が日本へ!
…と言うわけで、この『旋風少女2』では、実際に日本でも撮影が行われており、私にとっては、そこが本ドラマ一番の(いえ、それ以上に“唯一”の)見所。

画面には、東京観光のお約束、浅草寺を中心とした浅草界隈が映し出される他…

旋風少女2

長安が好きな漫画<SLAM DUNK(スラムダンク)>の舞台になっている湘南へも。

旋風少女2

宿泊も神奈川で、江ノ島にある惠比壽屋という旅館とのこと。


美少女マッチの対戦相手だってもちろん日本人。

旋風少女2

敵は櫻花流道館が誇る三姉妹、加藤百合、加藤小百合、加藤銀百合。
“百合(ゆり)”と“小百合(さゆり)”は分かるけれど、“銀百合(ぎんゆり)”の命名は、日本人には無い発想ですよねぇー(笑)。

“百合 Băihé”は、中国語でも、お花のゆり=Lilyの意味。
なので、まず姉の“百合”ありきで、下の二人の妹は、“スモール・リリー(小百合)”と“シルバー・リリー(銀百合)”という発想なのだと思う。

で、しかも、一番上の姉・百合を演じているのは、王曉娟(ワン・シャオジュエン)という中国人。
1996年生まれ、11歳で跆拳道(テコンドー)を始め、優秀な成績を収めていた人で、2013年、試合に出場した際、成志超監督の目に留まり、今回の出演に至ったのだと。

加藤百合の妹、小百合&銀百合を演じているのは、リアル日本人。

旋風少女2

姉役の王曉娟よりずっと年上、1987年生まれの双子の姉妹、蒼あんな&蒼れいな
近年は台湾を拠点に、それぞれ“安娜”、“芮娜”の名で、アイドルユニットA'N'Dに所属していたが、メンバーの内、この二人だけがドーンッと年上のアラサーだったし、さすがに脱退したようですね。
私は最初から、「なんでよりによって今更あの手のアイドルユニットなのよ?!」と彼女たちのマネージメントの方針に疑問を抱いていた。

でもねぇ、『旋風少女2』は、そのマネージメントの方針がブレていた頃に出演が決まったのか…

旋風少女2

今どき、欧米の作品にも登場しない不思議な日本人キャラで登場しております。
キョーレツな印象を残すので、ある意味、成功かも。

中華圏の人々にとっての日本は、アニメとかコスプレのイメージが強いのか…

旋風少女2

日本での美少女マッチでは、普段は真面目ちゃんの百草も、珍しく青緑のウィグで試合に臨んでいる。


ちなみに、2017年3月、こちらに記したように、台湾の絵本作家・幾米(ジミー・リャオ)が<星空>日本語版出版記念でトークショウ&サイン会を行った時、会場の紀伊國屋書店の片隅で、蒼あんな&蒼れいな姉妹を見掛けた。
実物の彼女たちは、年相応で、“都会の綺麗めOL”って感じでしたヨ。

★ キャスト その①:旋風少女・戚百草

旋風少女2

安悅溪(アン・ユエシー):戚百草~姿をくらました若白先輩を想い続ける元武道の天才少女

前作の胡冰卿(フー・ビンチン)から、百草を引き継いだのが、この安悅溪。
日本では、『旋風少女2』の前に、彼女のもう一本の出演ドラマ、『花千骨(はなせんこつ) 舞い散る運命、永遠の誓い~花千骨』も放送されたから、すでに知っている人も多いはず。

『花千骨』での役は、主人公・趙麗穎(チャオ・リーイン)の血から生まれた“糖寶”という霊虫(…!)。

花千骨:安悅溪

もっとも、糖寶は、最初こそ緑の芋虫だけれど、途中から、人間の姿に劇的な変態。

虫だった彼女が、『旋風少女2』では、一気に人類の女性主人公に格上げですヨ。安悅溪、大出世。
現地では、前作の胡冰卿が好評なため、安悅溪を見る目が厳しくなっているようだけれど、日本人ウケするルックスは、胡冰卿より断然安悅溪の方じゃなぁーい…?!
皆さま、どう評価しましたか。

★ キャスト その②:百草を巡る恋のライバル

旋風少女2

池昌旭(チ・チャンウク):長安~アメリカ風雲堂館の元首席コーチ 松柏道館の新コーチに就任

前作で百草の恋のお相手・若白先輩を演じた楊洋(ヤン・ヤン)が降板したため、代打で投入されたのが、韓国の池昌旭。
池昌旭は恐らく『奇皇后 ふたつの愛 涙の誓い~기황후』で、中華圏で知られるようになったのではないだろうか。
日本ではどうなの?池昌旭目当てで初めて大陸ドラマを観るファンも多いのでしょうか。
一応中国語は勉強したようだが、吹き替えされているので、元々のファンにはガッカリかも。
演じている長安は(“長安”というくらだから西安出身の設定?)、冷酷な鬼コーチから徐々に心根の優しさを見せていく、いわゆるツンデレキャラ。

ちなみに、前作の男性主人公・若白は、武術のみならず、洗い物や針仕事といった家事も得意であったが、本作の長安もまた武術以外に夢中になれる趣味があり…

旋風少女2

しばしば木彫に没頭。
当然、使用するのは木材だが、仕上がった作品はカラフルな樹脂製という摩訶不思議も起きたりする。



陳翔(チェン・シャン):方廷皓~賢武道館の御曹司からワケあって風雲堂館へ

陳翔は方廷皓役で前作からの続投。
そして、前作同様、百草に片想い。
今回は若干シツコく、強引に“恋人関係お試し期間”を設けたりするから、ちょっとウザい。
しかも、その後、闇落ちし、“LOVE百草♪”から一転、彼女への激しい憎悪を募らせていくから、益々面倒。

今回のキャスティングで、少々残念に思うのは、二人の主要男性キャラに、前回ほどのコントラストが無いこと。
前作は、若白役の楊洋と、中国人にしては韓流スタア風の陳翔との違いが明確で、多様性が感じられた。
今回は、リアル韓国人の池昌旭が投入されたことで、韓流ダブル押しになってしまった印象。
もっとタイプの異なる男前を揃えた方が、幅広い視聴者に対応できるのでは。

★ キャスト その③:その他

旋風少女2

吳磊(ウー・レイ):胡亦楓~松柏道館の二番弟子

楊洋も胡冰卿も降りたのに、まさか売れっ子の吳磊が残留するとは思わなかった。
そうしたら、案の定、続編では出番少なし。
忙しくなっちゃったから、そりゃあ、脇キャラの『旋風少女』などには、全力投球しませんよね。



郭俊辰(グオ・ジュンチェン):路飛魚~事情があって岸陽にやって来た不思議ちゃん

吳磊の穴を補うために投入されたと思われるのが、この郭俊辰。そう…

太子妃狂騒曲:郭俊辰

『太子妃 狂想曲<ラプソディ>~太子妃升職記』で九王の腰巾着になっている楊嚴を演じた、あの子。
『旋風少女2』の飛魚クンも、『太子妃』の楊嚴と似たキャラで、お馬鹿で憎めない。

★ 小道具

この続編『旋風少女2』では、気になった小道具が一つ。

旋風少女2

松柏道館の門下生、楊睿がよく手にしているプチ扇子…!
一種類だけではなく、柄やサイズが違う物にたまに変えている。
楊睿は、前作にも登場しているキャラだけれど、前作では、こんなお扇子、持っていませんでしたよねぇ?!
ちょっぴりオネェっぽいというか、踊りのお師匠さんぽい雰囲気のある楊睿には、お似合いです。


こういうプチ扇子がどういう用途で売られているのかは知らないが、昨今、中国で流行っているのだろうか。
私のお気に入りフォトグラファー、陳漫(チェン・マン)が、この春、雑誌<時尚COSMO>のために、京都で撮り下ろした楊冪(ヤン・ミー)のグラビアでも…

楊冪:京都でお扇子

楊冪がプチ扇子。陳漫の手にかかると、スタイリッシュ。

★ 飲料&お菓子

近年、大陸ドラマの中でやたら飲まれている物といったら、そう、RIOですよね?
でも、『旋風少女2』は、元武道に青春をかける爽やかな若人たちの物語。
いつでもどこでもアルコール飲料RIOをラッパ飲みしていたら、健全なイメージに合わない。
では、彼らは何を飲めば良いのでしょう。

旋風少女2

はい、中華版ヤクルト、健康的な乳酸飲料、“小樣小乳酸”!通称“小樣(シャオヤン)”。
特徴は、そのサイズ。
日本でお馴染みのヤクルトが65mlなのに対し、小樣は330ml。ヤクルトのざっと5倍!
「大好きな物は思う存分たっぷり飲みたい!」という消費者の要望に応えた結果が、このビッグサイズなのだろうか。


もう一つ目に付くのが、“日本で買ったお土産”という設定で、幾度となく画面に映し出される、(↓)こちらのパッケージ。

旋風少女2

“いちごの王様 福岡のいちご うさぎクリーム大福”という商品。
但し、食べているシーンでは、この白いプチ大福ではなく、ピンク色の水晶餅のような物が使われている。
情報が正確かは断言できないけれど、ショッピングサイト淘寶などでは…

旋風少女2

この“博多あまおう ぷるるん”という商品が、「『旋風少女2』に出てくる日本のお菓子」として販売されている。

これら日本のお菓子は、小樣小乳酸とは違い、ドラマのエンディングをチェックしても、メーカー名がクレジットされていない。
つまり、メーカー側がお金を払って、作品内で宣伝させてもらったのではなく、ドラマ制作者が自主的に小道具として使ったのかも知れませんね。
かなりの宣伝効果があったはず。
メーカーさん、「なんだかよく分からないけれど、中国からの注文が急に激増した」なんていう怪現象が起きませんでした?

★ テーマ曲

前作では、オープニングでもエンディングでも、本来有ったはずのクレジットタイトルを、日本で全て消し去り、ただのイメージ映像を流すという余計な処理を施されたから、カチンと来たが、この続編では、ちゃんとクレジットタイトルが付いている。この改良は評価。

で、テーマ曲は、オープニングが、若手女性シンガーソングライター印子月(イン・ズーユエ)の<衝動>、エンディングは方廷皓役で出演している陳翔(チェン・シャン)が歌う<只是朋友>
陳翔は人気があるから、ここには彼の<只是朋友>を貼っておきます。
元々音楽出身の陳翔は、歌うに留まらず、作曲も手掛けている。耳に残る綺麗でキャッチーな旋律です。







最終回では、ずっと受け入れられないでいた若白先輩の死を、いつの間にか認められるようになっていた百草。
百草に好意を持つ長安には、「若白先輩のことを忘れられない」と自分の気持ちを素直に打ち明けるも、そこに気マズイ雰囲気はなく、二人は舞うように元武道の取り組みをし、将来に恋の予感を残してThe END。
ええーーーっ、ナンなの、この中途半端な最終回!一体どんな編集をしてしまったのだか…。
恐らく、日本版では、オリジナル版の35話の後半1/2と、最終回36話をバッサリ丸々カットしている。
私はこのドラマにまったくハマらなかったので、“ラスト割愛”という有るまじき暴挙にさえ目を瞑れるけれど、毎週放送を楽しみに追っていたファンは、こんないい加減なラストで納得するの?
だいたいさぁ、百草と長安の関係をこんな半端に匂わせて幕を閉じたら、若白先輩が蘇生して(?)復帰する『旋風少女 第3季』にどう繋げるのヨ…。
一つ考えられるのは、日本におけるプロモーションを、韓流押しで、“『私のツンデレ師匠様!』という邦題の韓流スタア池昌旭主演作”と位置付けた以上、それに辻褄を合わせるため、池昌旭扮する長安に花を持たせて幕を閉じる必要があったという事。
池昌旭が出演せず、楊洋が復帰する続々編『旋風少女 第3季』との繋がりなんて、日本の配給会社はこれっぽっちも考えていない。
ちなみに、前作を配給したのは別の会社。
本作の配給会社は、これが池昌旭出演作だからこそ取り扱った訳で、彼が出ない続々編との繋がりなどお構いナシなのであろう。
何度も言いますが、私は『旋風少女』には興味が無いので、別にそれでも構わない。
が、しかし、コンテンツセブンは、過去にも『女医明妃明妃 伝雪の日の誓い~女醫·明妃傳』で、私の御贔屓、主演の黃軒(ホアン・シュエン)を“ホアン・シュアン”の誤表記で広めた前科があり、私にとっては、良い印象がまったく無い。
その前科者が、今度は“ラスト完全割愛”をやったのだから、油断がならない。
この先、私にとって興味ある作品が、コンテンツセブンの手に渡ったら、要注意である。
このコンテンツセブンと限らず、“二匹目のドジョウ”的に韓流から中華作品に手を広げた配給会社は、元々の中華作品ファンをイラっとさせるズサンな仕事が目に付く。

『旋風少女2』に関しては、本当のラストを知りたい人は、オリジナル版の35話&36話を観るべし。
そして、その内容を私にも教えて下さいませ。

【追記:訂正とお詫び
今、ザっとオリジナル版の35話&36話に目を通してみたら、ほぼ全て回想シーンという常識的には有り得ない回で、そもそもオリジナル版がクズだった…。
あれをばっさりカットしたのは、妥当な判断。
“『女医明妃伝』黃軒誤表記問題”は根に持っておりますが、“『旋風少女2』ラスト割愛問題”に関しては、有らぬ疑いをかけてしまったコンテンツセブン様に心よりお詫び申し上げます。
35話&36話は、『旋風少女2』での池昌旭の足跡を振り返るためだけに存在するような、池昌旭プロモーション映像なので(もしくは“ダイジェスト版『旋風少女2』”)、池昌旭ファンは観てウットリして下さいませ。


ホームドラマチャンネル、水曜深夜のこの枠は、6月20日から、EXOの張藝興(レイ/チャン・イーシン)主演『プロポーズ大作戦~求婚大作戰』を放送。
タイトルからも分かるように、十年ほど前、月9で放送された、山下智久&長澤まさみの同名主演ドラマの中国版リメイク。
張藝興主演作は、日本にあまり入ってきていないので、ファンは嬉しいのでは。
『旋風少女』に続き、このドラマもまた、私は明らかな“ターゲット圏外”で、特別興味は無いのだけれど、日本の若い子が、アイドルなどを通すことにより、偏見を持たずに、中国の文化に接するのは良い事だと思うので、『プロポーズ大作戦』の放送は大いに結構。

映画『万引き家族』

万引き家族

【2018年/日本/120min.】

東京の下町にひっそり佇む一軒家。
そこに暮らす柴田家は、働き手の夫婦、日雇いで働く治と、クリーニング店で働く妻・信代の僅かな収入では成り立たず、祖母・初枝の年金と万引きで生活をしている5人家族。

冬のある日、スーパーを訪れた治と息子の将太は、いつも通りの連携プレイで万引きし、充分な収穫を得て、家へ向かう途中、団地の廊下の片隅で、たった一人で凍えている小さな女の子を見付け、連れ帰る。

「ゆり」と名乗るその子の身体には無数の傷。
その晩は、温かな物を食べさせ、翌日、治と信代がこっそり元の団地にゆりを返しに行くと、室内から、ゆりの両親が激しく罵り合う声。
信代は考えを一転、ゆりを改めて柴田家に連れ帰る。
「これって、誘拐じゃなか?」と躊躇する治に、「身代金を要求するわけじゃないんだから、誘拐じゃない」と信代。

あの日から2ヶ月以上が過ぎた初春。
柴田家の居間のテレビに「荒川区で5歳の女の子・北条じゅりちゃんが行方不明」というニュースが流れる。
娘の不在をずっと警察にも届けず、あれこれ言い訳を並べていた両親を、児童相談所が不審に思い、事が明るみになったという。
行方不明の女児は、紛れもなくゆり。
この子の名前は、“ゆり”ではなく“じゅり”だったのだ。
信代は、この子の名を“ゆり”から今度は“りん”に変え、髪も短くカット。
りんは、6人目の家族として、柴田家で暮らし始めるが…。



『三度目の殺人』(2017年)に続く是枝裕和監督最新作は、先月開催の第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞。

万引き家族

日本の作品がパルム・ドールを受賞するは、今村昌平監督の『うなぎ』(1997年)以来21年ぶりとのことで、日本中を大いに沸かせた。


是枝裕和監督作品のファンとしては、パルム・ドール受賞は素直に嬉しいのだけれど、同時に、カンヌ効果で、これまで是枝作品に興味が無かった人も、映画館にドッと押し寄せ、希望日に良席で鑑賞できなくなるかも知れない…、という自分勝手な懸念も。

そんな時、公開記念で舞台挨拶付き上映が行われると知り、試しにチケット争奪戦に参戦したら、無事席を確保できたので、公開2日目に鑑賞するに至った。
(上映後に行われた公開記念舞台挨拶については、こちらから。)


 些細な事もネタバレになりかねないので、本作品をまだ鑑賞していない方々は、以下、読まずに、真っ新な状態で鑑賞することを推奨いたします。






本作品は、夫婦の僅かな収入と祖母・初枝の年金、そして万引きでやり繰りしている5人の家族・柴田家が、親から虐待を受けている5歳の少女・ゆりを6人目の家族として受け入れ、貧しいなりに幸せに暮らすも、ある事件を機に綻びが出はじめ、一家が解体していくまでを描く人間ドラマ


人気コミック/小説の映画化より、オリジナルの脚本で映画を発表することの多い是枝裕和監督。
カンヌで勝負した本作品もまた、原案も脚本も自ら手掛けている。

なにせ、2018年1月末のクランクアップから僅か4ヶ月ちょっとで公開となった出来立てホヤホヤの作品ゆえ、私は、内容についてほとんど知らぬまま鑑賞。
鑑賞前の予備知識では、“祖母の年金と万引きで生計を立てている家族の物語”という程度の認識。

また、子が親の死を届け出せず、不正に年金を受給し続けた“年金詐欺事件”や、子供に万引きをさせて捕まった親の話など、実際、近年、日本で話題になったニュースをヒントに、監督が脚本を書き上げたという事も知っていた。

それらの事から、日本にジワジワと蔓延する貧困や、そういう人々を生み出しながらも、臭いものに蓋をし続ける社会や政治に一石を投じる作品なのかとも想像。



実際に鑑賞したら、確かに社会問題を扱った作品だったのだけれど、そこにさらに、ベールに覆われた人物像や人間関係を紐解く謎解きミステリー的な要素も。


昔ながらの価値観では、日本の一般的な“家族”というと、ついつい血縁者の集合体を想像してしまう。
まぁ夫婦は他人同士だけれど、子とは血を分けており、同居している親は、妻か夫どちらかの肉親である、と。

無意識下でそういう考えに縛られ、『万引き家族』を観ていると、少しずつ、所々で「えっ、ちょっと待って、この人、どういう人?」と混乱を生じさせるシーンがポツリポツリ。

例えば、信代の間に生まれたと思い込んでいた祥太が、治のことを“父ちゃん”と呼べないでいる。その時初めて、祥太は信代の連れ子だったと納得(…したら、その解釈も間違いだった)。
風俗店で働く亜紀は、信代の妹らしい。
と言うことは、治の母親だと思っていた祖母・初枝も信代の母親で、治は婿養子なのか?


このように、不可解な疑問を投げ掛けながら、徐々に徐々に明かされていく柴田家の実態が、“血縁者の集合体”ではなく、それぞれに事情を抱えた“赤の他人同士の集合体”だったから、びっくり。

何かしらの思惑や打算が皆無だったとは言い切れないし、世間の常識からは外れていても、一つ屋根の下で肩を寄せ合い生きている“家族”らしきユニットを形成しているわけ。
産むだけ産んで虐待するゆりの実の両親などとは対照的で、他人同士の柴田家の方が余程温かで、結び付きが感じられる。


だが、社会的に認められない家族は維持存続が難しい。
祖母・初枝の死、そして息子・祥太の補導で、メッキがみるみる剥がれ、柴田家ついに解散。

本作品は、元はバラバラだった赤の他人が家族になるも、また元のバラバラに散っていく様子を描く、疑似家族ユニット結成&解散の物語でもあり、その背景を解いていくプロセスが秀逸…!





疑似家族ユニット“柴田家”のメンバーは、こんな顔ぶれ。

万引き家族


日雇い労働者の夫・治にリリー・フランキー
クリーニング店で働く妻・信代に安藤サクラ
祖母・初枝に樹木希林
風俗店で働く亜紀に松岡茉優
息子・祥太に城桧吏
そして、6人目の家族となるゆりに佐々木ゆみ


皆それぞれに素晴らしいのだけれど、特に私の印象に残ったのが女性陣。

祖母・初枝役の樹木希林は、『歩いても 歩いても』(2008年)で初めて起用されてから、本作品が6本目になる是枝裕和監督御用女優。

『万引き家族』のノベライズ本を読んだうちの母が「小説には、祖母は歯が無いって書いていあるけれど、樹木希林は歯、あるんでしょ?」と聞いてきた。
いえいえ、その小説の通りで、今回は入れ歯を外して出演しており、昔話に出てくる妖怪ババァのような独特なオーラを放っている。
その昔、うちの近所にも、蔦の絡まったお化け屋敷のような古い木造家屋に、沢山の猫と暮らし、子供たちから気味悪がられていた、こういうおばあさんが居たことを思い出した。

この祖母・初枝は、毎月6万円の“年金”という名の定収入がある柴田家の大黒柱
物語前半、初枝は、年金について、ポツリと「慰謝料みたいなもの」と言う。
その時は、その表現を、漠然と“社会に対する不満の代償”と受け止めた私だが、後になって、彼女にとっては、本当に慰謝料みたいな物だったのだと判明し、腑に落ちた。
初枝は初枝で、納得し難い過去を背負っており、それを心のどこかで引きずっていたのかも知れない。


柴田家の女性でも、常連の樹木希林とは違い、松岡茉優安藤サクラは是枝裕和監督作品初登板。

松岡茉優
はねぇ、正直言って、数年前なら、是枝作品とは一生縁のない若手だと思っていた。
特別美人じゃないし、決定的な特徴が無いから、鳴かず飛ばずのアイドルで終わる…、と。
ところが、多分『勝手にふるえてろ』(2017年)辺りを機に、一気に“勢いのある若手女優”に。
『万引き家族』で、風俗店で働く亜紀をサラリと演じているのを見ても、肝が据わっていると感じる。

で、その亜紀が、初枝の元夫の後妻さんの孫で、風俗店での源氏名“さやか”が実の妹の名前だったというオチには、意表を突かれた。
結局、初枝の本音はどうなのだろう?
亜紀を自分の手元に置くのは、元夫への秘かな復讐に過ぎなかったのか?
いや、あの家からツマ弾きにされたという自分と共通の傷を心に持つ亜紀に、居場所を与えたかったのでは?


安藤サクラは、今回、印象に残るシーンや演技が一番多かったキャスト。
子供と接するシーンでは、とても深い母性を感じたのだが、出産して間も無く本作品に出演したことは、何かしら影響したのだろうか。

そのように、実際の安藤サクラは、私生活でママになった訳だけれど、扮する信代は出産していない。逮捕後の取り調べで「産んだら誰でも母親になれるの?」と道徳的に正しい疑問を口にする信代に対し、警察の宮部が「でも、産まなきゃ母親になれないでしょ」と物理的な正論で返し、絶句する信代の表情は、私、気が付いたら、息をせずに見入っていましたよ。

あと、勤めていたクリーニング店をクビになった後、贅沢して買ったお洒落な下着姿で、夫・治とお素麺を食べ、そのまま性行為に至るシーンの妙な艶めかしさよ…。


子役がアザトイ作品はゲンナリだけれど、是枝裕和監督作品は、その点、安心して観ていられる。
今回も、子役には台本を渡さず、口頭で伝えながら演出するスタイルをとったそうで、子供が子供らしく、とても自然。

祥太役は、2006年生まれの城桧吏(じょう・かいり)という男の子。
すでに目鼻立ちの整った美男子で、作品の内容に重なる部分があるせいか、『誰も知らない』(2004年)の柳楽優弥が何となく重なった。

さらに、役にドンピシャ!と感じたのが、ゆり役の佐々木みゆという女の子。
2011年生まれで、撮影時は役と同じ5歳。
気のせいか、平均的な5歳よりプチサイズに見える。
小さぁーくて、細ぉーくて、なんか親鳥に捨てられたヒナのようなしおらしさが漂っていて、この子がスクリーンの中に佇んでいるだけで、見ているこちらが切なくなってきてしまうのよ…。






近年、芸術性と娯楽性を共存させた作品作りに努めている是枝裕和監督。

そういう映画監督は世界中に大勢いて、例えば、最近観たばかりの『軍中楽園』(2014年)の鈕承澤(ニウ・チェンザー)監督は、師匠の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)とはまた違う娯楽性を加味した作品を作るとずっと言い続けている。
…が、そもそも娯楽性皆無でもOKな私には、鈕承澤監督作品は、娯楽性が強過ぎると感じてしまう事しばしば。

ところが、是枝裕和監督は、そこら辺の匙加減が絶妙。
新作の『万引き家族』には、取り分けそう感じた。
現代社会を反映させたり、作家性もきちんと出しているから、国際市場で評価されるし、作家性を殺さないまま、娯楽性を共存させているから、ともすれば退屈になりかねない貧困家庭の話が、とても面白く仕上がっていて、この家族の実態はナンなの?この人たちどうなってしまうの?!と、知らず知らずの内に作品に注意を引かれ、あれヨあれヨという間に2時間経過。

私、上半期の内に2018年度一番の日本映画を観てしまったかも。
日本映画には頑張ってもらいたいので、下半期にこれを越える作品が出てくれば、なお嬉しいけれど。
とにかく、『万引き家族』は、是枝裕和監督全作品の中で、私のベスト3に絶対に入る。


疑似家族ユニット柴田家メンバーの“その後”の物語があるとしたら、どんななのでしょう?
『万引き家族』のラストでは、ユニットを解散しても、治と信代には、子供たちに対する愛情が感じられたし、そんな疑似両親に別れを告げる祥太には、彼らの愛情を感じ取ったゆえの気遣いが感じられた。

心配なのは、“ゆり/りん”こと北条じゅりちゃん。
児童虐待を繰り返していたにもかかわらず、、柴田家が逮捕されたことで、“子供を連れ去られた可哀相な被害者”になった実の両親のもとに再び返されてしまった彼女。
「子は親を選べない。じゃぁ、自分で決められるなら、もっと強くなるんじゃない、絆が」という信代の言葉は、満更間違っていないのかも知れない。


ちなみに、この『万引き家族』、今週末、2018年6月16日に開幕する第21回上海國際電影節(上海国際映画祭)でも上映。
是枝裕和監督の国際的知名度に加え、カンヌ受賞作を中華圏で最速で観られるとあり、チケット入手は激戦を極め、ものの数十秒で完売し(一説には20秒以内、しかも上映館は大陸サイズ)、追加上映も決定(こちらも即完売)。

中国語のタイトルは『小偷家族』
リリー・フランキーは、漢字表記必須の中国では本名の“中川雅也”で紹介されている。
それ誰ですか?って感じですよね。
私、字をみて、真っ先に、沖雅也を連想してしまいましたよ。
なお、この上映に合わせ、監督と松岡茉優ちゃんが上海へ行くそうです。


余談になるけれど、その上海国際映画祭と同時期に映画祭の正式イベントとして開催される2018上海・日本電影周(2018上海・日本映画週間)では、久本雅美池脇千鶴中条あやみ板野友美安藤政信佐野勇斗らが現地へ趣き、登壇することになっている。
中華圏でも通用する“ルックスが良い日本の若手女優”がなかなか中国の映画祭に参加しない事を、私はこれまで残念に思っていたので、今年は中条あやみちゃんが登壇すると知り、ちょっと嬉しい。
(但し、この日本映画週間は上映ラインナップが大衆向けの幼稚な娯楽作品に偏っているのが残念。)


『万引き家族』上映終了後に行われた公開記念舞台挨拶については以下のリンクから。




『万引き家族』公開記念舞台挨拶

万引き家族

第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール受賞のニュースも記憶に新しい、是枝裕和監督の最新作『万引き家族』が、いよいよ公開。


公開2日目の2018年6月9日(土曜)、東京と大阪で記念の舞台挨拶をやるという。
早い内に観に行きたかったので、「どうせなら…」と、舞台挨拶付き東京会場のチケット争奪戦に参戦。

午前11時の回と、午後2時25分の回の二回あり、私の狙いは前者。
週末は朝寝坊したい人が多いだろうから、きっと午前の方が取り易い、…なんて考えたけれど、あまり関係なかったかしら?
やはりカンヌ効果もあるのか、販売サイト上の座席がみるみる埋まっていくのだが、なんとか席を確保。
私の理想の良席とはちょっと違うけれど、最悪でもない。
しかも、随分前に買って持っていたムビチケが使えたので、つまりはお値段1400円也。
話題作で舞台挨拶付きなのに、良心的です。


★ 会場

万引き家族

東京会場は、TOHOシネマズ六本木ヒルズ
私が好んで行く映画館ではない。
利用するのは、東京国際映画祭の時くらい。


万引き家族

今回使用するのは、ここでは一番大きなスクリーン7で、収容約520人。

私の席は、前から6列目のF列。
映画鑑賞だけなら、もっと後方が良かった…。しかも隅っこの方。
でも、まぁ、座席の手前が通路になっているので、映画鑑賞も舞台挨拶鑑賞も、割りとし易い気がする。

客層はねぇ、うちの母が「『万引き家族』観たいの~」と言っていたくらいだから、年齢高めかと思いきや、意外と若い人が多い。
売れ筋のチケットをネット上で確保するには、それなりの“慣れ”が必要だから、高齢者には難しいのかも。
一番若い子は、親と来ている小学生で、私の周りには、大学生っぽい子が結構いた。


★ 『万引き家族』公開記念舞台挨拶

万引き家族

私が行った1回目の舞台挨拶は、映画の上映終了後。
午後1時20分頃、司会進行役のフジテレビ宮司愛海アナが、注意事項などを簡単に説明した後、一人一人名を呼ばれた順にゲスト登場。


気になる本日の登壇者は、是枝裕和監督をはじめ、出演のリリー・フランキー安藤サクラ樹木希林松岡茉優池松壮亮、そして子役の城桧吏佐々木みゆで、計8名。


映画の中ではボロを身にまとっている一家だけれど、公開記念の舞台では、特に女性陣は華やかに装っております。
樹木希林は、白シャツ+黒のジャケット&パンツという毎度のブレない“希林ルック”だが、松岡茉優ちゃんは、若い女の子らしく、赤のシフォンのワンピース、安藤サクラは、“パルムドール(金のシュロ)”受賞作の舞台挨拶だけに、ゴールドのスリップドレス。
肩から胸を覆う黒のシフォンの透け感がセクシー。
(作中、スリップ姿で、お素麺を食べるあのシーンも、ちょっと彷彿。)

ちなみに、足元は、松岡茉優がプレーンな黒のカーフのクリスチャン・ルブタン、安藤サクラはTABIシリーズの真っ赤なメゾン・マルジェラであった。


「小さく生んで、小さな声で届けようと思ってスタートした作品でしたが、結果的に、こんなに広く遠くまで届けられることになったのは、スタッフやキャスト、皆のお陰です」という是枝監督のご挨拶でイベントはスタート。

以下、気になったやり取りを幾つか残しておく。


松岡茉優

カンヌ以来、また家族に再会できました。
今日、池松壮亮さんまで来てくれるとは知りませんでした。
彼氏をようやく家族に紹介できます。“4番さん”でーす!


樹木希林

将来の見込みが無さそう。幸せにならない相手だね。


池松壮亮

ちょっとしか出ていないのに、来ちゃって…。
この作品は、観終わった後、すごく興奮して、是枝さんに握手を求め、図々しいんですけど「カンヌ獲ってきて下さい!」と言っちゃいました。
そうしたら、本当にカンヌでとんでもないお土産をとってきてくれて。
平成生まれとしては、平成の終わりにこんな事が起き、とても嬉しいです。


樹木希林

“平成”で思い出しましたが、今度天皇陛下になられる方の結婚式って今日だったんですよ、6月9日
なんで覚えているかと言いますとね、“ロック”だから。


安藤サクラ

是枝組で過ごした時間は短くて穏やかなのに、所々でとんでもない興奮や爆発が起きるんです。
ここにいる皆さんは凄い方々なのに、納豆ご飯みたいな感じで。
何て言っていいのか…、キャビアを食べているのに、納豆ご飯のような。


リリー・フランキー

すみません、いつもこんな感じなんです。



樹木希林

カンヌは、世界中の映画関係者が、色んな思いやお金をかけてやって来る、本当に凄い所なんですよ。
正月も何もなく、寒くて、汚い中、撮影して、あんな貧しいのが、ひょいと賞を獲ったのは、偶然じゃない。
9歳から28歳まで団地にしか住めなかった方で、貧しさじゃ右に出る者がいないのに、それで世界に認められたのは快挙です。
これが映画の作家性。
皆、監督には感謝しております。



樹木希林

好きなシーンは、土砂降りの雨の中、子供たちが駆けてくると、家では見事なセックスシーン。
冬にあんな雨を降らせて、子供を走らせるなんて、児童虐待ですよ。


是枝裕和監督

いえ、あれは夏で、本当に雨が降ったんですよ。
それで、脚本をああいう風に書き換えたんです。



終盤、子役の佐々木みゆちゃんから、監督にプレゼントの贈呈。

万引き家族

プレゼントは、佐々木みゆちゃん手作りの“パルム・ドール”

質問

何で作ったの?


佐々木みゆ

段ボールと、折り紙と、のりとハサミと、普通の紙と、あと、葉っぱは、みゆのうちの葉っぱ。


樹木希林

あら、庭のある家に住んでいるの?
(さすがは、不動産に敏感な樹木希林ならではの返し …笑!)


ちなみに、(↓)こちらが本物のパルム・ドール。ショパール製です。

万引き家族

元は、ジャン・コクトーのデザインだったが、1998年にニューデザインに変更。
新たな物は、ショパールのアーティステックディレクター、キャロライン・ショイフレによる。
素材は、18Kイエローゴールド。

佐々木みゆちゃんは、パルム・ドール本体のみならず、それを収納するケースもちゃんと再現していたのですね。
「本物はプロデューサーに渡し、私はこれを取っておきます」と嬉しそうな表情の是枝監督。



最後は、是枝裕和監督が、「『万引き家族』は納豆ご飯のような映画です。だから、毎日でも食べられるし、観る度に味わいが変わると思います」と安藤サクラの言葉に絡め、締めのご挨拶。


その後、5分ほど、メディア向けのフォトセッションがあり、午後1時50分頃、30分程の舞台挨拶終了。






会場中に漂う「カンヌ受賞おめでとう!」の温かい空気を肌で感じる良いイベントであった。
要所要所で毒を吐く、マイペースな樹木希林は、やはりムードメーカー。

映画とは直接関係ないけれど、次期天皇皇后両陛下の御成婚記念日が6月9日ということは、一生私の記憶に残りそう。

ちょっと心配なのは、その樹木希林が片手で杖をつき、是枝裕和監督に支えられながら、ステージに上がったこと。
よく自分で「全身癌」だの「死ぬ死ぬ詐欺」だの言っているけれど、大丈夫なのだろうか。



肝心な映画『万引き家族』の詳細は、また後日。
私は、とーーーーっても気に入りました。
上半期で、2018年度一番の日本映画を観ちゃったかも、…と思っている。





追記:2018年6月13日(水曜)

映画『万引き家族』についてブログ更新。



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