周迅×高聖遠

2014年7月、チャリティイベント開催時、日本で言う“人前式”のような形で、多くの人々の祝福を受け、結婚した周迅(ジョウ・シュン)高聖遠(アーチー・カオ)。(→参照

近年は、離婚疑惑が度々報じられていたが…

周迅×高聖遠 離婚

2020年12月23日、ほぼ同時刻に各々の微博で、互いに祝福を送り、これが実質的な離婚の公表となった。

大物女優の離婚の割りに、スキャンダラスに盛り上がっていないのは、唐突な印象がなく、「やっぱり、そうなったか」と納得する人が多いためかも知れませんね。
結婚当初からお財布を別々にしていたので、財産問題で揉めることもない円満なお別れのようだ。
(心情的に本当に“円満”かどうかは知る由もない。)

年内に面倒をきれいサッパリ片付け、2021年は心機一転!って感じでしょうか。
お二方の新たな門出を、私も祝福させていただきます。


大明風華:如懿傳

周迅と言えば、今年4月、wowowでの放送を終えた主演ドラマ『如懿(にょい)伝 紫禁城に散る宿命の王妃~如懿傳』は、とても良かった。
『瓔珞<エイラク> 紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~延禧攻略』と時代や人物が重なるため、一緒に語られることの多いドラマだけれど、私はもう断然『如懿傳』派。





まぁ、確かに、そういう秀作との出逢いもあったのだけれど、全般的には、2020年は、日本における大陸ドラマ躍進の年だったという印象、…悪い意味で。

本格的にブームに入ったなと感じる。

皓鑭傳

ずっと韓ドラ一辺倒だったNHKが、9月、日曜夜のその韓ドラ枠を大陸ドラマの『コウラン伝 始皇帝の母~皓鑭傳』に明け渡したのは、象徴的な出来事。
(『皓鑭伝』が流行っているようには、全然見受けないけれど。実際はどうなの?)

ついにNHKまで手を出すほどだから、日本に入って来る大陸ドラマの本数は激増。
しかし増えた分はほとんどが安っぽいラブ史劇偶像劇なので、平均するとクオリティは一気に低下。
それでも、お気に入りのアイドル俳優さえ鑑賞できれば大はしゃぎする中高年女性が一定数いるから、彼女たちが飽きてくれるまで、クオリティの低下は底知らず。

元々ブームというものに懐疑的だった私は、現状を見て、やはり懸念していた通りのイヤな方向に来つつあると軽く失望…。

私の失望をよそに、どんどん激増している大陸ドラマの駄作の中でも、取り分け目立つのがラブ史劇
“ラブ史劇”は、2020年度の大陸ドラマin日本を語る上で、外せないワードですね。


ラブ史劇 起源

そもそも、“ラブ史劇”とは…?

ラブ史劇を大量生産しているはずの当の中国には、 “ラブ史劇”なるジャンルはない。
日本でドラマを宣伝する際に、配給会社なり放送局なりが使い始めた表現であろう。
(自国のドラマが“ラブ史劇”と称されているのを知る中国人が増えれば、この先、現地中国でも、逆輸入的に“ラブ史劇”に相当する中国語の表現が使われだす可能性はあるかも。)

私が初めて“ラブ史劇”という表現を見たのは、確か韓流ドラマの宣伝だったような気がする。
NBCユニバーサルエスピーオーコンテンツセブンといった韓ドラで稼いだ配給会社が、近年、二匹目のドジョウ的に次々と大陸ドラマに手を出すようになったので、“ラブ史劇”という表現はそのまま大陸ドラマにも使われるようになり、取り扱い本数の増加から、今では韓ドラ以上に大陸ドラマにおいて乱用されるようになったのだと推測。
(それとも逆で、大陸ドラマ→韓国ドラマ?)


大陸ドラマにおいて、ラブ史劇”という表現を目にし始めた当初、私は、そのあまりの安っぽさに気絶しそうになったが、“ラブ史劇”名目で紹介されているドラマを観たら本当に安っぽかったので、「言い得て妙」とやけに納得。


問題は、配給会社や放送局がお調子に乗って、硬派なドラマまで“ラブ史劇”の形容で紹介し始めたこと。

例えば、現在BS11で放送中の『明蘭 才媛の春~知否 知否 應是綠肥紅瘦』
これ、“硬派”とは言わないが、軽薄でもなく、私は、良いドラマだと思っているのだけれど…

明蘭

配給会社は、“ラブ史劇”としてプロモーション。

わざわざ自社の取り扱い商品を貶めるような宣伝をする会社なんて無い。
エスピーオーは、本気で、“ラブ史劇”が視聴者を惹き付ける魔法のワードだと信じて疑っていないわけよ。


ラブ史劇の定義

では、実際には、どのようなドラマが“ラブ史劇”なのか?

前述のように、そもそも“ラブ史劇”というジャンルがあるわけではないので、当然、明確な定義などない。
あくまでも、私が“ラブ史劇”と聞き、イメージするのがどのようなドラマかで、“ラブ史劇”に必要な条件を定義してみる。

ラヴありきのドラマ

非現代劇

陳腐な作風


以下、もう少し具体的に説明。


これは、当たり前ですね。
ミステリーありきやアクションありきで、ラヴ要素が希薄だったら、“ラブ史劇”には成り得ませんから。



本来なら、“史劇”は、史実に題材を求めたドラマを指すべきなのかも知れないけれど、実際には、日本では、随分前からドラマでも映画でも、史実ベースでなくとも、広く“時代劇”の意味で使われているのを目にするので、細かい分類はもはや不要なのかも。

中国だと、“古裝劇”という都合のいい表現がある。
これは、史実か架空かは関係なく、時代設定が古代であれば“古裝劇”。

“ラブ史劇”の“史劇”も、この“古裝劇”に相当すると見た。
史実ベースでも全くの架空でも、非現代ならOK。


日本でよく観られているドラマを例に挙げてみる。
まず、一応史実を題材にしているラブ史劇代表格は、こちら(↓)

大明風華:武媚娘傳奇

『武則天-The Empress-~武媚娘傳奇』

『武則天』は、歴史上実在した武則天(624年-705年)を主人公にしているけれど、“伝記ドラマ”というカテゴリーには入れ難い。
実際にはよく分かっていない武則天の前半生を、武媚娘という善良な娘と李世民の乙女チックで陳腐なフィクションのラヴストーリーに仕立て、そこにドラマ全体の6割もを費やしてしまった完全なる“ラブ史劇”である。


続いて、架空の世界を描くラブ史劇代表格。

ラブ史劇:三生三世十里桃花

『永遠の桃花 三生三世~三生三世十里桃花』

まったくの架空なので、表現の自由度がより高い。
よって、手のひらからビームだのスモークだのを出して敵に挑んだり、CGの珍獣が大暴れするといった演出もある。
一種の“特撮モノ”とも呼べるが、内容は、3度生まれ変わっても絶対にめぐり逢って惹かれ合うズ太い赤い糸で結ばれた男女の時空を超えた腐れ縁の物語なので、“ラブ史劇”に区分するのが適当。
さらに詳細に説明するならば、“ファンタジー・ラブ史劇”で良いでしょう。



古今東西、“ラヴストーリー”と分類される作品はあまた有り。
私だって、お気に入りのラヴストーリーくらいある。
そんな自分のお気に入りラヴストーリーを、ラブ史劇とハッキリ線引きしたくなってしまうこの気持ちは何なのか?

そう、それは、“ラブ史劇”という言葉にそこはかとなく漂うペラッペラな安っぽさ…。
それこそが、私が“ラブ史劇”名目で紹介されているドラマを観て「言い得て妙」とやけに納得した理由。
“重厚なラブ史劇”なんて、“ガリガリのデブ”と同じくらい有り得ない。





以上のような諸々を、「ラ・ブ・史・劇」というたったの4文字に集約させたネーミングのセンスに感服。
日本のどこかに居るであろう、この言葉の発案者様に、“命名センス抜群de賞”を贈りたい。
(世間では、ご本人の狙いとは異なる意味に捉えられているとは思いますが…。)



2021年への期待

さて、2021年はどうなるでしょう。
配給会社も、遅かれ早かれ、何かしら気付くであろう。
そうすると、今後、“ラブ史劇”の表現は減っていく可能性がある。

かと言って、配給会社が、イメージの悪い“ラブ史劇”という形容を封印したところで、扱う作品が相も変わらず陳腐なラブ史劇ばかりなら、今と変わらない。
パッケージを変えても中身が同じなら、同じようにウンザリされます。

この記事の序盤に、私は「硬派なドラマまで“ラブ史劇”の形容で紹介されるのが問題」と書いたけれど、本当に改善を願うのは、“ラブ史劇”という形容の問題ではなく、ちゃちぃラブ史劇が日本に必要以上に溢れている現状。

どう考えても、ラブ史劇、供給過多ですから…!


他に選択肢が無いのなら仕方がないけれど、色々ある中で、なぜわざわざ不出来なラブ史劇を選んで大量に買い付けるのだか…。
勿論『武則天』のように現地では不評だった物が日本ではそこそこウケる場合もあるけれど、それにしても評価の低い駄作の買い付けが多過ぎるのは、もしかして作品未見で勘を頼りに購入しているのでしょうか?
中国の業者は、日本の配給会社のことをきっとお金を払ってまでクズを引き取ってくれる物好きで有り難い“廃品回収”“ゴミ拾い”だと思っているわよ…。
もし私が中国の悪徳仲買人なら、「若いイケメン出てれば、どうせ日本、買うあるよ」と侮るわ。





ちなみに。
IP(Intellectual Property 知的財産)、簡単に言ってしまうと“原作”を持つドラマのことを、中国では“IP劇”と称す。


IP劇:甄嬛傳+琅琊榜

十年以上前からあり、名作と誉れ高い物も多く、例えば、日本でも知られる2012年度の『宮廷の諍い女~後宮甄嬛傳』や2015年度の『琅琊榜(ろうやぼう) 麒麟の才子、風雲起こす~瑯琊榜』なども人気web小説を原作とするIP劇。


IP劇:古劍奇譚

本格的なIP劇ブームは2014年度『古剣奇譚 久遠の愛~古劍奇譚』辺りからと言われている。

ちょうど“小鮮肉(若いイケメン)”ブームが起きた頃。
大陸ドラマをずっと観ている人なら気付くと思うが、その頃から、若いアイドル俳優を重用してドラマを制作し、そこから映画、アニメ、ゲームへと展開していくIPが激増、投資も過熱しIPバブルに。

日本もそうだけれど、そういうのって、若い子向けが多い。
(日本で若い層を引き込めたのは、多分『陳情令』くらい。私自身はまったくハマらず。)
しかも、コケる物が少なくない。
中国のIP劇の場合、日本とは比較にならない大金が動くから、収益を上げるため無駄に話数を増やし、“灌水劇(水増しドラマ)”だの“倍速看劇(倍速視聴ドラマ)”などと揶揄される内容ペラッペラの駄作も大量に制作され、問題にも。


今は落ち着き、特に現代劇を中心に本格的なドラマがヒット。
日本の配給会社が、韓流で儲けた成功体験から、“ターゲットの中高年女性は若いイケメンとラヴストーリーが大好物”という思い込みに囚われ続けていると、良作を逃し、この先も間違いなくクズを掴むから。

くれぐれも、twitterで世論調査した気にならないように。
キラキラのラブ史劇とかアイドルのファンというのは、一人で百人分呟くものです。
しかも、最近は、ちょっとでもラブ史劇に批判的な意見を見付けようものなら、絡んで、論破しようとする“ラブ史劇批判撲滅自警団”のような事をする面倒くさいおばさんまで出現しているので、委縮して黙る人もいる。
結果的に、表面上、ラブ史劇が流行っているように見えても、相当怪しい。
SNSでは流行の実態は見えにくいものであります。


理想は選択肢が色々あることでしょうか。
そうすれば、誰でも何かしら好みの物に巡り逢えるだろうし。
人の好みは十人十色で、ラブ史劇の需要も皆無ではないのだから、一つの選択肢として有っても当然OK。
10本中1本がラブ史劇なら、普段はそういうのに興味が無い人でも、物珍しさからあのB級感を楽しむかも知れない。
でもね、それがメインだと、ウンザリするのよ…。

来年2021年は、時代劇でも現代劇でも、アイドル俳優の出演に頼っていない、内容勝負のドラマが数多く日本に入って来ることを願います。
取り敢えず、最近失望させられていたwowowが、2021年は初頭から盛り返してくれそうなので、それは楽しみ。