
本日、2019年9月17日(火曜)、朝日新聞が“ひと”のコーナーで、映画ポスターのデザインで知られる中国人デザイナー黃海(ホアン・ハイ)を紹介。
黃海に関しては、これまでにも当ブログでぼちぼち取り上げてきたが、日本の新聞に掲載されたこの機に、もう少し突っ込んでここに改めて記すことにいたします。
黃海 Huang Hai

黃海 Huang Hai
まずは簡単なプロフィール。
■氏名 :黃海 (拼音 Huáng Hăi)
■日本での通称:ホアン・ハイ
■日本での通称:ホアン・ハイ
■生年:1976年
■出身:中国福建省
■学歴:廈門大學 美術系 (1999年卒)
黃海は、厦門(アモイ)で大学卒業後、テレビ局のカメラマンを経て、2002年、北京で、アメリカ系の著名広告代理店オグルヴィ(Ogilvy/中国名:奥美)に入社。
2007年には遠山廣告に転職し、チーフデザイナー、美術総監、クリエイティヴ総監を歴任。
2012年には、独立し、竹也文化工作室を創設。
遠山廣告が現在の黃海に繋がる一つの大きな転機と言えそう。
(勿論、それまでの全ての経歴があっての彼だとは思いますが。)
遠山廣告は、映画のポスターデザインをメインでやっている広告会社で、姜文(チアン・ウェン)や馮小剛(フォン・シャオガン)といった大陸の大物監督御用達。
2007年、黃海は、初めて映画のポスターをデザインする。
それが、こちら(↓)

『陽もまた昇る~太陽照常升起』(2007年)
姜文監督作品のポスター。
本日の新聞記事には「07年、“趣味で作った”という一枚の映画ポスターが人生を変えた。美しい配色、スタイリッシュな構図。これまでにはないアートのようなポスターの登場に中国の映画業界は騒然とした」と綴られている。
恐らくそれが『陽もまた昇る』のポスターのことを指している。
でも、そもそも遠山廣告が映画ポスターを手掛けるデザイン会社なので、“趣味で作った”というのは、どうなのでしょうねぇ?
もしかして、『陽もまた昇る』のポスターに関しては、社内の他のデザイナーが担当者で、黃海も「じゃぁ僕も試しにやってみる」とお遊び感覚でデザインしたところ、依頼主の姜文監督が、担当者のデザインより、オマケ的に付いてきた黃海のアイディアの方を気に入って採用したとか…?
まぁ、どんな事情にせよ、以降、黃海は映画ポスターの分野で、人気のデザイナーとなっていったわけ。
黃海と日本映画
本日の新聞記事にはさらにこうある。
「中国本土の映画館で6月に初めて正式上映された宮崎駿監督のアニメ映画『千と千尋の神隠し』。その中国版ポスターを手がけ、日中両国で話題をさらった。」
それが、こちら(↓)

これも、商業アニメではなく、アート系アニメを思わせる色調で、大人っぽくて幻想的。
ただ、日本のメディアが黃海が取り上げ、映画ファンの間でちょっとした話題になったのは…

『万引き家族』(2018年)
『千と千尋の神隠し』より、是枝裕和監督のこちらだったような気がする。
もっとも、是枝裕和監督作品よりアニメの方が観る人の層が広いので、私が知らない所で『千と千尋の神隠し』のポスターが『万引き家族』以上の話題になっていたのかも知れない。
いずれにせよ、時期に大きなズレはなく、黃海の名がここ日本で知られ始めたのは、ほんの数ヶ月前のこと。

是枝裕和監督は、『万引き家族』が中華圏最速で上映される上海國際電影節のために訪中した際、ポスターをデザインしてくれた黃海本人とも御対面。
『千と千尋の神隠し』以外にも、黃海はスタジオジブリ作品のポスターを手掛けている。

『となりのトトロ~龍貓』(1988年)
まだあります、日本製アニメのポスター。

『STAND BY ME ドラえもん~哆啦a夢:伴我同行』(2014年)。
ドラえもんに中国伝統画のエッセンス。
日本映画ではないけれど、日本人監督によるつい最近の作品も。

『聞煙~Silence of Smoke』(2019年)
滝田洋二郎監督による初の中国映画
あちらでは、2019年8月末に公開された映画で、老舗菓子店の現当主とその息子の物語。
(もう少し詳しくは、こちらを参照。)
中華な作品
当然中華圏の作品のポスターはもっと沢山手掛けている。
本当に多いので、ここには一部だけ。

『SHADOW/影武者~影』(2018年)
日本で公開中の張藝謀(チャン・イーモウ)監督作品。
太極図を大胆に取り入れたモノトーンのポスターは、インパクトがあり、なおかつ神秘的。

『白銀帝國~Empire of Silver』(2009年)
モノトーンで東洋的なデザインなら、姚樹華(クリスティーナ・ヤオ)監督によるこちらも。
流れる墨と共に浮遊する辮髪の郭富城(アーロン・クオック)。

『道士下山』(2015年)
大陸の大物監督なら、陳凱歌(チェン・カイコー)監督も。
日本では劇場未公開のままDVDスルーとなった作品。

『山河ノスタルジア~山河故人』(2015年)
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督も今や大陸を代表する映画監督となりました。

『ニセ薬じゃない!~我不是藥神』(2018年)
日本でも正式劇場公開希望!の願いを込めて。
2018年、中国で大ヒットした監督 文牧野(ウェン・ムーイエ)×主演 徐崢(シュー・ジェン)による社会派人間ドラマ。
香港系の監督の作品も多数。

『黄金時代』(2014年)
許鞍華(アン・ホイ)監督によるこれは、映画本編もポスターも好き。

『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ~中國合夥人』(2013年)
こちらの陳可辛(ピーター・チャン)監督作品は、打って変わって賑やかな雰囲気。

『グランド・マスター~一代宗師』(2013年)
香港なら王家衛(ウォン・カーウァイ)監督は外せませんよね。

『イップ・マン継承~葉問3』(2015年)
葉偉信(ウィルソン・イップ)監督作品も“葉問(イップ・マン)もの”繋がりで。
台湾系も。

『あなたを、想う~念念』(2015年)
張艾嘉(シルヴィア・チャン)監督による梁洛施(イザベラ・リョン)復帰作。
地味な作品ながら、2019年11月、日本で正式に劇場公開されることが決定。
日本版ポスターも、黃海のこのデザインに、日本語のタイトルを入れた物になったみたい。
張艾嘉監督は、黃海のセンスが気に入ったようで、この後の『妻の愛、娘の時~相愛相親』(2017年)のポスターも黃海に依頼している。
映画祭
個々の映画作品のみならず、映画祭のポスターにも、黃海デザインの物が。

2016年 第53回金馬獎
修復され、この年の金馬獎のスクリーンで蘇った楊德昌(エドワード・ヤン)監督の名作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』(1991年)をフィーチャーした物で、少年 張震(チャン・チェン)が懐中電灯で闇に光をさしているデザイン。

2019年 第22回上海國際電影節(上海国際映画祭)
1961年に上海美術電影製片廠(上海美術映画製作所)が制作したアニメーションの傑作『大暴れ孫悟空~大鬧天宮』がテーマ。
レトロモダンな悟空がキュート。
ここに挙げたのは黃海作品のごく一部。
映画のポスター以外にも、展覧会やお芝居など、色んな物があるので、興味のある方はご自身で調べてみてくださいませ。
私自身は、東洋的なエッセンスを感じられる作品や、テクスチャーが凝った作品に、特に惹かれる。
黃海と限らず、近年、中国の映画ポスターには素晴らしい物が非常に多い。
生活に直接必要ではないアートやデザインの水準は、経済的精神的豊かさに比例しがち。
『空海 KU-KAI~妖貓傳』(2017年)のポスターのクオリティが、日中でえらく違うため(残念ながら、悲惨なのは日本版の方…)、“中華映画ポスターに一言(いえ三言ほど)”の表題で、すでに以前当ブログにも綴ったように(→参照)、科学技術や工業技術のみならず、こういうヴィジュアルデザインの分野でも、日中でもはや立場が逆転してしまっているんですよねぇ…。
日本は、未だに、アジアぶっちぎりNO.1だった昭和の頃のイメージを引きずりまくり…。
ひがみっぽく中国のアラ探しばかりしていないで、いい加減、自分たちがすでにドン底にいることを認識しないと。
黃海のような優秀なクリエーターがメディアで紹介されることによって、日本が刺激を受け、もち直してくれることを切に願いますよ。
黃海は自身を“映画の嫁入り支度を整える人”と称している。
映画で大切なのは当然映画本編だけれど、その内容を瞬時に伝えたり、より良く見せるために、ポスターが担う役割りは小さくない。
お気に入り外国映画の日本版ポスターがダサいと、「うわぁぁぁ、作品のイメージぶち壊し…!」とガッカリさせられる。
日本はまず簡単にできる事として、映画のポスターに、変な光線とかメラメラと燃え上がる炎を画き込むクセからやめて欲しい。
勿論日本が独自に素敵なポスターを創りだせるに越したことないけれど、今の状況が急に好転するとは考えにくいので、だったら、頑張らなくていいから、中国版をそのまま流用して。
映画監督だって、自分の作品がダサいポスターで宣伝されることなんて望まないと思う。
頼みます。















「千と千尋」のポスター、ものすごく話題になってましたよ!
Twitterとかですごく拡散されて、広く話題になったようです。中華芸能なんか全く知らない友人ですら、私がこの話題をふったら「あ、あのすごく綺麗なやつ!知ってる!」って言ってましたから。
おっしゃる通り、是枝作品よりアニメ、特にジブリ作品の方が見る人も多いし知名度が高いから、こっちの方が世間一般では話題になりやすいんでしょうね。
mango
が
しました